ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2008年 3月15日 中世史研究所図書館会議室の修復

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ボロミー二の設計したオラトリオの食堂での修復に続き、
今年は同じオラトリオ会のブロック内の、「時計の広場」側にある
中世史研究所図書館での修復を行うことになった。
今回のプロジェクトはラツィオ州から資金の出ている
女性のための修復講座用の研修の一環。
(私も実は試験を受けたのだが、非ヨーロッパ共同体の外国人であるということで
残念ながら落とされてしまった。)
幸い工房長のおかげで、工房の学校の生徒たち何人かとともに
参加させてもらうことになった。
私の担当は修復状況の記録とスケッチ、欠損部分の補充など。
対象物は図書館内の「会議室」の壁面の3つを覆っている
高さ5メートル以上の書棚。
おそらく天井のフレスコにも描かれているように、
1932年前後に設置されたものだ。
様式はネオ・ルネッサンス。木はクルミ、中の棚はモミ。
現在は各種中世史研究雑誌を綴じたものが収納されている。
今までは図書館の「虫」だったが、今回はその虫を退治する役だ。
オレンジの園を囲んだ、昔のロッジャ(回廊)の一部を成していた、
高さ6メートル以上ありそうな巨大なアーチ型の窓。
窓に近い書棚はやはり日焼けをして黄色く変色している。
虫食いはそうひどくなく、欠損部分も今回は非常に少ない。
前任者による修復には色の明るすぎるストゥッコが使用されているので
随分目立つ。

修復の方針:
保存を目的とするもの。木に養分を与え、「鮮度」を取り戻す。

作業の過程:
1)色の濃いめのストゥッコで虫食いの穴をうめていく。主に指を使用。
余分なストゥッコはすぐにふきとる。
2)鋼綿で余分なストゥッコをとりながら、表面全体を磨き、汚れを除去。
同時に欠損部分を補充。クルミの木を使用。
3)木全体に潤いを与えるためにも油分の多い
液状の殺虫剤を脱脂綿で塗り付ける。
(この時点ですでに木の色調がより落ち着いたものとなる)
4)湿気や清掃用の洗剤によって白く変色してしまっている
一番下の台の部分は、ヴァセリンオイルを脱脂綿で塗り付ける。
(木は本来の色調を取り戻す)
5)ストゥッコで色の白すぎる部分には木を染めるモルデンテを塗る。
6)ターペンタインを多め混ぜた蜜蝋にタールを入れたものを全体に塗り、
磨く。

明日からは他の壁面の仕上げに入る。
イースター前には作業の大部分が終了しているだろう。
今回も映像の方を撮っているので簡単なドキュメンタリを
制作する予定だ。