ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

LEO LIONNI  1952年作  "World on View" ポスターについて

 

 

              

f:id:iammee1999:20200506234741j:plain


              

このポスターは印刷されたものしか残っていませんが、原画は黒、青、オレンジの3色によるシルクスクリーンであったと、スイスのグラフィックデザイン雑誌「グラフィス」、1952年44号に掲載されたレオのポートフォリオに記載されています。

レオがボローニャでの個展や自伝にも自身のグラフィックデザイン作品の代表作として掲載しているこの作品は、1952年1月末にニューヨークで開催されたユネスコの第3回アメリカ国内執行委員会会議(The Third National Conference of the U.S. National Commission for UNESCO )を記念する美術展のシンボルとして使用され、シルクスクリーンの原画は展覧会のロカフェラ―センターのオープニングセレモニーにて、ユネスコのハイメ・トレス・ボデー事務局長によりお披露目されました。

ユネスコの美術館委員会とニューヨークの美術館連盟によって企画されたこの美術展「世界をみわたす」(World on View)は、ニューヨーク五番街に面した約100の店舗のウィンドーに展示されました。参加した美術館のコレクションから選ばれた展示作品は、会議のテーマに沿ったものが中心でした。

「無知との戦い」、「世界の教育レベルの向上」などのテーマの他に、ユネスコと芸術との関わりを取り上げた第3回会議には多くのアーティストたちが参加しています。そして、世界のアーティストたちがいかにして世界平和や様々な文化間の相互理解を深めるのに貢献しているか、またユネスコがその後どのようにしてそれを促進していけるかどうかが討論され、世界のアーティストたちの交流プログラムを企画したり、ビジュアルアーティストたちの国際団体を作っていく必要があるのではないかと提唱されました。[註 <<U,S,National Commission Unesco  News>>, Feb.-March 1951, Vol.5,n.8, p.18;<<Art Digest>> Vol. 26, N.9,Feb.1, p.5, p.14. レオは1962年にもアメリカ国内で開催されたユネスコのポスター・コンクールの審査員を勤めている。]

作品を作るということは、社会的、政治的メッセージを発することに等しいと、とレオは言いました。アーティストはこの重要な役割の重さをしっかりと自覚する必要があるのです。アメリカがヴェトナム戦争の只中にあった1968年に出版した『あいうえおの木』はレオがまさに、アーテイストとして世界平和に貢献した作品なのでした。