ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2009年 10月 アンジェリカ・カウフマン銅版画修復 Restoring Engravings after Angelica Kauffman

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18世紀後半に活躍した(美人)女性画家、
スイス生まれのアンジェリカ・カウフマン(1741 –1807)。
画家だった父親の手ほどきを受け、12歳ですでに父親を超える画家に成長した。
音楽にも丈ていたらしく、一時音楽家になろうか、
絵の道を進もうか、非常に迷ったようである。
イギリスではジョシュア・レノルズにかわいがられ、
肖像画家として非常に高く評価された。
また神話や古典に想を得た絵画や歴史画にも丈ており、
彼女の絵を元に多くの銅版画が作成されたようである。
18世紀末はイギリスでシェークスピアの作品が見直され、
版画入りのシェークスピア体系を出版するというプロジェクトが進められ、
アンジェリカも参加したようである。
(このあたり、もうすこし調べてみたいところです。)

息子のクラスメートのおばあちゃんの家系はローマの貴族。
そのおばあちゃんから受け継がれたアンジェリカの作品を元にした
4枚の、神話を主題にしたアクワフォルテの銅版画。
額ごと相当な虫食いに遭っており、かなり破損しているのだが
テレーザ先生の手ほどきをうけつつその修復に挑戦。

額からはずし(こちらの修復は最小限におさえ、昨日完了。)
1)まずは写真撮影と状態の観察、記録。
製紙工房の透かしが一カ所、よく見える位置にあり、
どこの紙なのか、調べられる可能性大。
2)そしてドライクリーニング:
刷毛でほこり、汚れ、虫の除去。
続いて練り消しゴム、粉消しゴムを版画の部分にのせて
コットンで軽くマッサージ。
紙が見る見るうちに白くなっていく。
(昔の紙はすばらしいです。)
紙の裏の部分には虫の糞がたくさんついていた。
表面には湿気によるしみ、フォクショング(茶色いしみ),虫食いの穴、
そして紙の表面ののりが大好きな紙魚による銅版部分の破損などなど、
まさに修復のお手本状態。
これからどうきれいになっていくか、経過を見るのが楽しみだ。

そういえば昔、ヴァティカン市国のアポストリカ図書館で
18世紀の典礼書を出してもらって開いてみたら、
本の中にトンネルを掘る死番虫の白い幼虫にあいさつをされた。
しかしどうしても読まなければならない部分があったので
虫さんと共に本を読まざるをえなかった・・・