ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2010年 2月3日 ピニェートの工房1周年記念

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ピニェートに小さな工房を開いてからちょうど一年が経過した。
この一年はナンバーワンと私たちが呼んでいるB翁のおかげで
修復の出前など、いろいろなタイプの作業を行うことができ、
たくさんの経験を積んだ。
特に面白かったのはドカーティの40年代のラジオ3台と、
ネオ・ルネッサンスのテーブルと椅子のセットの修復。
そのほかにも、新しく開店した友人の書店のために行った
ベンチとしても使える引き出しセット8点の修復。
これは書店になる前のスポーツ店の人たちが置いていったもので、
緑色のペンキで塗られていたのだが、
よくみると下の木がマホガニー。
これは絶対にいいものになる!と友人を説得し、ペンキを全部はがして修復。
現在、書店地下のコンファレンスルームの壁に沿って並べてあり、
上にクッションが乗っかっていてとてもいい感じだ。
壁にとりつけられているクローゼットの扉のリフォーム、
小学校のモンテッソーリメソッドの学級用の本棚の制作など、
修復からは少しはずれたところでの仕事。
残念ながらほとんどもうけはなかったのだが、
とりあえず家賃を払えただけでもよかったのではないか。
不景気でクライエントはなかなか見つからないというのが実情だが、
修復をすることは
クライエントの心のケアにもなっているのだということを
ナンバーワン翁は教えてくれた。
閉まらない扉、引き出しの壊れた金具、
本棚のたわんでしまった板。
翁は家の中のもろもろのこわれた事物を私たちに託し、
作業の音に耳を澄ましながら、うなずいている。