ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2020年3月15日 シャットダウン中のローマより

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みなさま お元気でお過ごしでしょうか。

こちら、美しい光の差す、すばらしい春の朝です。

私はローマの、比較的緑の多いプラーティ地区に住んでいて

幸いなことに、コンドミニアムにはお庭があり、

子どもたちが遊んだり、1メートルの距離を保ちながら

散歩をする人も見かけられます。

昨日は体温計を買いに外出しましたが(すでに壊してしまいましたが)

ショッピングバッグを手にお散歩をしているお年寄りたちに大勢会いました。

現在、外出は生活必需品の買い物や犬の散歩など、必要な場合のみ許されています。

そのため、買い物に行くつもりはないのに買い物袋を手に持ったり、

犬を飼ってないのに犬のリードを持って外出する人がいるのだそうです。

お年寄りにはマスクをしていない人がたくさんいました。

マスクは病気になった人が基本的にするもの、

という考え方がメインでしたが、今では誰もが着用するようにと勧めらてています。

マスク着用が普通のこととみなされ、日本人観光客も今後、マスクをしていても

気味悪がられることもなくなるでしょう。

 

ローマの街は、歴史的中心街を離れると、ゴミ箱の外にゴミが山積みになっていたり、

犬の糞が散乱していたりと、とても非衛生的な街です。

しかも歩道も車道も穴だらけで、ころんで骨折をした知人が大勢います。

(ローマはいつぞやか、道路建設の最先端を行く街ではなかったかしら)

横断歩道はどこにでも駐車をする車にブロックされ、

ベビーカー、車椅子での移動も非常に困難です。

この地区には裁判所があることから弁護士や会計士が多く、

国営放送RAIの本部があるのでテレビ、映画関係者が多く住んでいます。

なので、教育レヴェルがどうこうというのは一切関係なく、

ローマ人自身が自分の街を大切にしていない、ということになります。

 

ローマ市の市政が全く機能していないと批判する以前に

ローマ人自身が自分たちのこの美しい街をもっときれいに保つことを

始められればいいのになあ、と日々思います。

(小中学生は教科書が重たいので、キャスター付きのかばんを使ってますが、

靴も含め、何度こどもたちのかばんのキャスターを洗ったことか。

地区に「デカ鼻」と呼ばれている水道がそこここにありますが、

これがなかったら大変なことになってました。)

各地区でRETAKE住民運動が公園の整備やごみ拾いを定期的に行っていますが、

小規模なので、あまり改善は目に見えません。

 

今回の感染ではしかし、規則を守らないことがかっこいいのだとまで

考えられているこの街の人たちを、(恐らく一時的に)変えるに至りました。

スーパーに行くと、みなちゃんと1メートルの間隔を保って静かに並んでいます。

しかも、ほぼ全員がマスクを着用。

まっすぐな列を作る、という行為はローマ人の最も苦手とするところです。

かつて筆者は子どものための英語学校に勤めていましたが、

夏の集中講座の時に子供たちを近くの公園に連れていくのに

列に並んで歩かせるのは、至難の業でした。

縄跳びのひもを長くして、それにつかまってもらう方式もだめでした。

犬の糞の始末ももゴミの捨て方も、ちゃんとしないとあなたの生命にかかわりますよ、

と脅かさないといけないみたいです。

 

フェースブックやインタネットでは、イタリア人が金曜日から午後6時になると、

テラスや窓辺に出てみんなで医師、看護師に対して拍手をしたり、

国歌を歌ったり、楽器を弾いたりとという様々な場面がアップされ、

世界中の注目を浴びました。

初日はうちのコンドミニアムでも、リードをとった住人のタンバリンを伴奏に、

みんなで国歌を歌いました。

(昨日のチェレンターノの課題曲AZZURROはしかし、

あまりうまくいきませんでした。

本日の課題曲は リーノ・ガエターノのMa il cielo è sempre più blu 

 

しかし、家の中にとどまらないといけない、という規則は

家庭内暴力を悪化させてしまいます。

ミラノのボランティア団体では、かかってくる電話が減り、

それは電話ができなほど深刻な状況になっているという印なのだと言っています。

刑務所では面会ができなくなったことに対し、各地で暴動が起きました。

また、ホームレスの人たちや物乞いの人たちもサポートしなけれないけません。

一人暮らしの、全く身寄りのないお年寄りたちのことも心配です。

そういう意味で、イタリア人が近所の人たちと

窓越し、テラス越しのコミュニケーションを取り始めた、

というのは本当によいことで、お互いのめんどうをみるということが

自然に行われるようになっています。

 

明日から筆者もオンラインで英語、日本語の講義を始めます。

中学、高校でもオンラインで授業をしているところがたくさんあるそうです。

姪っ子たちは毎日ワッツアップで宿題がどんどん送られてくるので

悲鳴をあげております。

 

飛行機から車まで、交通量が減り、空気の吸いやすいローマです。

 

この状況が早く終わりますよう、お祈りしています。

社会が崩れないように仕事を続けている人たちに感謝します。

トンネルを抜け出した時にはしかし、

この危機から学んだことが記憶の中にしっかりと残り、

いい未来を作っていくための糧となりますように。

Amen.