ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2007年11月23日 秘密の言葉

ムナーリは日本ではある程度知名度があるのかもしれないけれど
イタリアではデザイン、建築関係者、児童図書をよく知っている人でないと
名前は聞いたことがあるが、一体何をした人なのか分からない人のほうが多い。
(レオ・レオニ[レオ・リオンニ]を知らないお母さんも多い。
最近、バーバ・リーブリという出版社から
レオの本の復刻版が出ているのだが。)
息子のクラスの担任に先生たちに、
毎年2回(クリスマスと学年末)贈り物をするのだが、
クラスの父母代表であるという特権を活かして
プレゼントを選ぶ時には必ずムナーリの本なども入れたりしてみている。
しかし今のところ、具体的な効果は現れていない。
文科系の先生が芸術教育を担当するのだが
「クリエーティヴ・ライティング」(作文)の時間で
ジャンニ・ロダーリの方法をよく用いることはあっても
ロダーリの詩にイラストを添えたムナーリの方にはあまり
関心を示さない。

息子は自分は絵が下手だと思い込んでいているところがあったのだが
このごろ、駒形さんにいただいた「秘密のアドヴァイス」のおかげで
絵を描く楽しみを回復しつつある。
パラエクスポの近くのお寿司屋さんにて駒形さんは
ナプキンにデザートのぶどうを描き始める。
「よく見ればね、かけるんだよ。よおおおく見るんだよ。」
それは魔法の言葉。
この間、学校でも初めて先生に絵をほめられた。
グラフィックのセンスがあっても、やはり写実性のほうが優先される
イタリアの美術教育。(日本は今どうなのだろうか)
何かもうちょっとバランス、とれないものだろうか。

* ご参考までに。学年末にプレンゼントした本のリスト:

Wolf Erlbruch (vincitore Premio Andersen), L’anatra, la morte e il tulipano, Edizioni e/o La Balena, 2007 13 euro ‡ Maestra Cristiana e Maesta Clotilde, Maestro Stefano
(アンデルセン賞を受賞したエールブルッフの新作『あひる、死神、チューリップ』。死を美しく語っている。)

Weisner, M?ller, Ma gli animali si lavano i denti?, Fabbri Editore, 2007 [libro vincitore Ragazzi Awards 2006 sezione Non Fiction] 14,90 euro ‡ Maestra Cristiana e Maesta Clotilde
(2006年ボローニャ児童図書展ラガッツィ賞、ノンフィクション部門を受賞したドイツの本。『動物は歯を磨くの?』。ミュンヘンの動物園園長による動物に関することわざや言い回しと動物の習性との具体的な関係をおもしろく説明した本。動物園の裏話も混じっていておもしろい。19世紀の着彩したエッチングのようなレトロなイラストも素敵。日本語の言い回しに合わせた日本版もできればおもしろいのになあ、と思う。)

Sofocle (illustrato da Indrapramit Roy), Antigone, Lapis 2007, 18 euro ‡ Maestra Clotilde, Maestro Stefano
(もともとはインドで出版された本。同じテクニックで印刷されている、紙とインクの香りのするかっこいいアンティゴネー。)

Iela Mari, L’albero, Babalibri 11 euro ‡ Maestra Cristina
(この本は息子が選びました。言葉のない、きれいな本です。何度もめくって自分でおなはしを語れます。)

Ennio Peres, Concerto pitagorico:Le basi matematiche della musica, Iacobelli 2007 7,50 euro ‡ Maestra Cristina
(理科系担当ののクリスティー先生は音楽院も出ています。昨年開催された数学フェスティヴァルでの講演会を一つまとめたもの。『音学の数学的基盤』といったテーマなのですが、自分でも読んでみたいなあとおもって購入。)