ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2008年 5月 マーディア:パンのこね箱 Nadia's Madia

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これはヴィッラの友人のガレージの一番奥に収まっていた「マーディア」。
小麦粉を保存し、パンをこねるために使われていたカッソーネ。
パンが手作りされていた時代には各家庭にあった家具だ。
下のほうに本当は引き出しがあって、できあがったパンを保存できるように
なっているのだが、友人のものは簡略化された形のものだ。
素材はクリ。後ろの脚はクルミだ。
木食い虫さんたちにとってはクルミの木の方がおいしかったらしく
後ろ脚の残った部分に鋸の刃を入れたらぼろぼろと土のようにくずれていく。
野ネズミ一家が住んでいた形跡あり。
糞とおしっこのにおいをとるのが大変だ・・・
うしろにがりがりとかじって開けた穴があいている。

マーディアは地方によってデザインも呼び名も違う。
友人のものはリエーティ県やウンブリア州に特有なものらしく
リエーティ出身の工房の同僚がすぐにその地方のものだと分かった。
1827年のマントヴァ方言辞典の編者はその多様性に興味を持ち、
辞典の中に各地方の名称リストをのせている。
トスカーナ地方とその近辺では「アルカ」。
マントヴァやヴェローナでは「メーサ」。
アルカという名称は宗教的で、非常に味わい深い。
旧約聖書に出てくる契約の入れ物、聖遺骸入れなどが想起される。
パンはイエスキリストの肉体の象徴。
薔薇が香り、シナノキの緑が深まり、
教会では子どもたちの初聖餐式が。
もうすぐ聖体祭だ。

This is a "madia", a wooden case for bread-making that we
pulled out of my friend Nadia's garage in Villa up north of Rieti.
The design is typical of that region.
The madia has different names accordingly to the regions.
While browsing in the internet I found a copy of a
1827 dictionary of the Mantovan dialect.
The author was intrigued by the variety of its names and
added a list: in Tuscany it is called "arca",
around Mantova and Verona, "mesa", in Venice "albol" etc....
My favorite is "arca", which recalls the Ark of the Covenant and
reliquaries, it adds a ritual taste to the art of bread-making.
The Corpus domini festivities are coming up soon,
spring is bursting in color and the scent of roses beat the
fumes in this polluted city....