ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2010年 1月 ボローニャ国際絵本原画展審査完了!

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今回の審査は例年以上におもしろい展開となった。
審査員の方たちは全員、この展覧会が児童図書の見本市の中で
どのように位置づけられているのか、よく理解しているすばらしい人たちであった。
(審査はすいすいと進んでしまい、撮影する側としては
かなりあせってしまいました。)
おかげさまで「絵本原画展」という、日本語の名称が多少
コンクール形式のこの展覧会の実態とずれているかなあ、とあらためて
考させられもした。
もちろん、出版された絵本の原画も中に含まれているのであるが、
できあがった絵本の原画だけでなく、
絵本の原画にこれからなるかもしれない、
または凄い絵本を作るインスピレーションを与える可能性を内包している作品たちの
集まりなのだ・・・。
今年は技法的にもいろいろと考えさせられる作品も入った。
絵本作家でアーティストでもあるヴラディミール・ラドゥンスキーは
「この展覧会のアニュアル(カタログ)はアイディアを盗むためのもの」
とか、「フィクション、ノンフィクションは男と女と同じ、
いずれも平等」といったような名句?をとばし、
ロダーリの作品やおとぎ話を新しいタイプの挿絵で蘇らせる
編集者ガイア・ストックはのびのびとした作品に注目し、
イギリスのソールズベリー教授は特に展覧会としての
全体のバランスを考えていたようだ。
また日本からは素敵な広松由希子さんが参加し、
「子どものための絵本の絵」は定義できる姿形を
持ちえるものなのだろうかという疑問をみなに投げかけ、
質の高い新しいタイプの絵本を出しているスペインのOQOのベレンさんは
実にていねいに作品を審査。
ベレンさんもガイアさんも、編集者としておもしろいイラストレータを
応募作品の中から見つけ出していたようだった。
児童図書の出版にかかわるすべての人たちが
ふだん自分の持っている役割から解放されて
想像、創造力をぞんぶんに発揮できる自由な空間、
この展覧会はイラストレータにとっても、本を出版する人にとっても、
展覧会を企画する人にとっても、絵本についてずっといろいろと
考えつづけている人たちにとっても、
これから子どもたちのためにどんなものが作れるのか、
いっしょに考えるきっかけを与えてくれる宝物なのだと
あらためて思い、いつになくたくさんのエネルギーを拝受して
ローマに帰還した。