ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2010年 12月 17世紀絵画、額の修復 Un restauro di una tela del Seicento

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友人の家に伝わる17世紀の油絵です。
友人とは、前に銅版の修復をしてあげたところのお家の友人です。
おそらくカラヴァッジョの影響を受けたマンフレーディの周辺の画家の作品ではないかと
思われます。
友人のお母さん(貴族のプリンセスだったそうです)の遠縁の従兄弟の家にはもう一枚、
同じジャンルの絵があるそうで、どうやら2枚一組だったようです。
手には何を持っているのか。
表面が汚れて見えません。カジキマグロのようにも見えるし、剣にも見えるし、
あるいはバッグパイプを持っているようにも見えます。
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銀箔の上にラッカーのかかったぼろぼろの額から外してみると、
何と絵は木枠から切り取られていて
日本ではたとえば画板につかわれるプレスした紙製の板の上に
膠でべっとり貼付けられていました。
これはまだ文化財の修復理論が街中の修復家には普及していなかった
70年代の修復の結果だと思われます。
マエストロに相談したところ、
今年年金生活に入った有名な某修復家に修復してもらうことになりました。
(絵を描ける人は絵の修復はせんほうがよいと言われたことがあり、
私自身は絵画修復ばかりは手がけたことはないのです。
ちょっと真に受けすぎたかも。ははは。)
方法は・・・しかたなく、その板を後ろから削り取るしか術はありませんでした。
ということで、お見積もりも100ユーロアップ・・・。

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額からは銀箔のベースの石膏が崩れ落ちてしまった箇所がたくさん。
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うざぎちゃん糊と石膏からなるpastigliaで銀箔を貼るベースを再構築していきます。
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もちろん光が全然異なるのですが、
この工房で働く少年の肖像画、カラヴァッジョからそう遠くはありません。
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絵の方の修復は1ヶ月以内で終了。
(額の方は合計で5日間分の作業量でしょうか。
清掃、基盤再構築、銀箔を貼る、瀝青を塗り、ラッカーをかける)
きれいな絵です。少年はエプロンをかけていました。
そして手には・・・
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大工道具、錐を持っておりました!!
木のハンドルがいいです。
使い込んである感じの道具です。
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板を削り取り、キャンヴァスに張り直して木枠に張ります。
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絵が元の場所に戻りました。
絵を納品した晩、この絵の所有者であった友人のお母さんが夕食にいらっしゃったそうです。
きれいになった絵を見て、感激したそうです。
作者についてはも少し調査してみるとおもしろいかもしれません。