ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

19世紀半ば インペリアル、カルロ10世様式のテーブル修復

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とても大きいテーブルです。
磨くのに、腕の開くぎりぎりの直径。
とくに表面のラッカーが古くなり、白くなってしまっています。

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古いラッカーは植物性のオイルと石油を混ぜて熱したものを使って全部とりました。
古いラッカーをとると同時に乾いてしまった寄せ木の表面に油分を与え、
きれいな黄金色になっていきます。
上の写真で白くなっている部分が古いラッカーです。
(ぴかっと光っているのはフラッシュの反射です)

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新しいラッカーの層を合計5日間かけて作っていきました。
18世紀に東インド会社の活躍によりヨーロッパに普及した
ゴンマ・ラッカを、昔からの方法で磨きます。

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形としてはインペリアルスタイルの基台。
でもこの見事な脚の膨らみはカルロ10世風です。
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素材はクルミ。
所有者はナポレオンを泊めたことのある、由緒ある家系の出身。
どどおおおおんとした、どっしり系、総クルミ材のいい家具をたくさん持っています。
ナポレオンが寝たと言われるベッドの修復にも実はかかわりました。

寄せ木の多用もこの時代の特徴ですが、この菱形模様のものははじめてみました。

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このテーブル、所有者の新しい家に先日運ばれたのですが、
この夏の暑さのせいで,表面に問題が出始めているとのこと。
夏が終わり、9月になって室温が安定してからクライエントの家に行って
おそらく磨き直し・・・・ということになりそうです。
修復業7年、クライエントに問題があると言われたのは初めてです。
まだまだこれからもいろんなことが起きるんだろうなあ、と思います。
どんなふうになっているのか、本当はすぐに見に行きたいところですが、
もちろんマエストロストップがかかっています。
9月までにまだ、何が起こるか分かりません。
木は生きています。新しい環境に今、必死に順応しようとしているようです。

やれやれ。