ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

イタリアの小都市巡り 憧れのオレーヴァノ・ロマーノ Una gita a Olevano Romano

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たびたび研究や調査をしている中で登場していた
ローマから南西へ、約60キロほど行ったところにある丘の上の街、
オレーヴァノ・ロマーノ。
一体どんなところなのだろう、と思い描いていた街。
夫が珍しく、郊外にドライヴをしよう!と提案したので
じゃあ、オレーヴァノに行きましょう!と勝手に決めてしまいました。

有島生馬の『葡萄園の中』という軽快な短編小説の舞台、
今でもドイツ・アカデミーの支部のある街、
ローマの美術学校に留学していた松岡寿も訪れ,描いた街、
グスタフ・ドレが訪れ、ダンテの『神曲』の「地獄篇」の舞台セッティングに選んだ
ラ・セルペンターラという神秘的な樫の木の森のある場所、
そしてラツィオ州の赤ワイン、チェザネーゼの産地!

ドイツ人画家のコミュニティーは古くからローマにあったようなのですが
ローマ郊外の田園、そして特にオレヴァーノとその樫の木の森を愛した
ヨーセフ・アントン・コッホが現地の女性と結婚し、そこに居住するようになってから
オレヴァーノは外国人画家たちにとっての、一つの拠点となっていきます。

そういうなかで、19世紀末にローマで絵を習っていた松岡寿もオレヴァーノを訪れ、
有島生馬もそこに足をのばしているに違いないのです。

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オレーヴァノは岩を取り込んで作られた街。
家々が階段状に天に向かって上昇してゆきます。


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一番高いところにある、岩のてっぺんの家からの眺望はきっとすばらしいものにちがいありません。
テイレニア海まで見渡せることでしょう。

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あれあれ。
レンガの塔が、こんなに危なっかしいところに造られている。

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ラ・トリニタ、三位一体の祝祭の最中です。
神と子と精霊。
みな、キリストの姿をしています。
まんなかが神。
左側がキリストで、多分鳩を胸に抱いているのが精霊。
(三位一体には色々なおもしろ図像があります。キリスト三面像など。)

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たまたま駐車した場所に、こんなにいいレストランがあり、
本当に美味しい料理を楽しめました。
見晴らしもよく、サーヴィスもよく、インテリア、食器などとても凝っていました。
お客さんは常連ばかり。
地方の料理を中心とした、フルコースを2種類、3人で頼みました。

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レストランのハウスワイン、コルテ・デッラ・ルーナというチェザネーゼ。
ほんのりとしたにがみのある、おもしろい性格のワイン。

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カボチャの花の前菜。
中に実に新鮮な水牛のモツァレラが入っていました。
下のソースはチェリートマトによるもの。
(あとは食べるのに集中してしまって、写真とり忘れています。)
気取りすぎていない上品な料理。
最後にコックさんと感激の握手。
幸せにしてくれる料理でした。
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オレーヴァノの街の入り口にある、小さな美術館。
18世紀の版画もいくつかありました。
美術館は巨大な月桂樹の森の中。
農民の女性が頭のかごに赤ん坊を入れて歩いています。
ローマでも、すこし前までは頭に荷をのせるおばあさんをみかけることができました。
今ではほとんどみかけません。

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こちらはオレーヴァノからスビアーコに向かう途中にある、鍾乳洞。
これは洞窟のかつての入り口。
この地方の農民たちはこの洞窟のあるおかげで
食物の貯蔵が可能となり、
戦時中はローマに食料を提供しました。
ここはローマのライフラインだった地域です。
下の写真は現在の入り口。全長1000メートル。
入り口付近の300メートルまでガイド付きで入ることができます。
今では蝙蝠やサラマンダーの住まい。
石器時代の絵が少しだけ残っています。

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洞窟の入り口はまるでドレの地獄篇の銅版画を思わせます。
この洞窟の中も彼は見ているのかもしれないのです。
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ドレの版画です。少しこじつけ気味ですが、鍾乳洞風です。

残念ながら、神秘の樫の木の森には入れませんでした。
日曜だったので、アカデミーのあるセルペンターラのヴィラも閉まっていました。
次回訪れる時のお楽しみです。