ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

イタリアの小都市巡り 「プレゼピオ」人形制作者、テアーノのイヴァーナさんの工房にて

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本日12月8日は無原罪のお宿りの日、
イタリアではお休みです。
みんな、家でクリスマスツリーやイエス降誕の場面を描いた
「プレゼピオ」をクローゼットから取り出して飾ります。
こちらはナポリの伝統的な「プレゼピオ」の登場人物、「パストーリ」を制作するイヴァーナ。
お家に飾られた彼女の作品、巨大プレゼピオの前で
いっしょに写真をとりました。


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イヴァーナさんはとくに18世紀に発達した
ナポリ式のプレゼピオの作家さんです。
専門は40センチタイプの人物たち。
それぞれの人物の裏にはおはなしがあります。
頭と手足はすべて素焼きの彩色テラコッタ。
お家の地下の車庫が改装され、彼女の小さな工房となっています。

こちらは制作途中の人物の頭。
小さな粘土ベラがくさん。
バロック期の絵画から想を得ての制作。


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部品ができたら竃で焼きます。
温度は850°ほど。
11時間焼くのだそうです。
こちらは冷却中の足。

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焼き上がり、冷やしたのちに彩色。
アクリル絵の具を使います。

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すばらしい頭部です。
どのアングルから見ても味があります。
左側の人物はナポリの仮面劇に必ず登場する
プルチネッラでしょうか。

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ナポリまで行けば、プレゼプオを制作するためのありとあらゆる部品が売られているとのこと。
身体の部分はこのように、すでにできあがったものを使います。
はりがねにインド麻の縄がかかっています。

イヴァーナさんは息子が6ヶ月のとき、プレゼピオの人物、「パストーリ」
(羊飼い、という意味ですが、降誕劇に出てくるありとあらゆる人物たち全般をさします)
制作の専門家になりたい!!と思い、
ナポリのプレゼピオ制作講座に通い始めたとのこと。
ナポリまでの約40キロを、車で通っていたのだそうです。
車の運転はとても苦手で大嫌いだったのに、
情熱にかられてとにかく必死にがんばりました。

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イヴァーナさんの「パストーリ」は
テアーノの近くのサン・レウチョの絹をまとっています。
サン・レウチョの絹はきめな細かく、
モデリングに非常に適している、とのこと。
そのほか、息子さんのお古の靴下や古着が使用されます。
洋服はすべて手縫いです。

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リヴィングに飾ってあるプレゼピオの近影です。
どのアングルからのぞいても絵になるように人物が配置されています。
写真をとるのがとにかく楽しかったです。
天使のお告げを受け、皆に救世主が馬小屋で誕生したと伝えた羊飼い。
まるでバロック期の絵画の中に入り込んでいくようです。

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ジプシーの女性がマリア様を訪れ、
鉄製の工具の入った籠を見せ、
貴方の息子はやがて鉄くぎを打たれ、殉教するだろうと、その運命を予言します。

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葡萄はキリストの血であるワインを象徴しています。
隣にいるのは従姉妹の聖ヨハネ君。


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こちらは居酒屋のおやじさん。
一夜の宿を求めたイエスとマリアを追い払ってしまった張本人。
(二人は結局馬小屋に落ち着き、そこでイエス様が生まれます。)
そのため、実は悪魔だったのではないかと、民衆の間では解釈されていました。
このように、聖書のお話しは、民衆が何世紀も経て作った様々な「外伝」的な物語に
取り囲まれ、それがエスカレートしてナポリでは巨大「プレゼピオ」」の形をとり、
教会の中だけではなく、
貴族の館などにも飾られるようになりました。

イヴァーナさんの作品はナポリで展示会などがあると
必ず出品を求められるのだそうです。
すごいです、血のつながりはありませんが、
遠戚にこのようなすばらしい作家がいるなんて、誇り高い限りです!!