ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

イタリア映画 「鋼鉄ジーグ」と呼ばれた男


先週の金曜日より始まったローマ映画祭。
本部はAuditorium Parco della Musica (音楽公園)なのだが、
街中の映画館でもいくつかの映画が上映されている。
開催期間中にはラジオ局のスタジオやバールなどが特設され、
フェスティヴァルを盛り上げる。
何年前のことだったのか忘れてしまったが、
「ハンガー・ゲームズ」の主演女優が映画祭に招かれた時には
イタリア中から若いファンがおしかけ、
息子もクラスの女子と一緒に一日中レッドカーペットの横に座り込み、彼女の到来を待った。

17日にはドラマの脚本家で元々は漫画家である友人、
メノッティが脚本を共作した映画、
「鋼鉄ジーグと呼ばれた男」が初公開された。
上映場所はオフィシャルスポンサーのマツダによる、特設Mazda Cinema Hall。
1000席の巨大なホールはほぼ満席で、上映は大成功だった。
映画関係者、テレビ関係者、記者のほかに珍しく多くの学生の姿が見られた。
(残念ながら、ローマで多く開催される映画祭やコンサートなどで
学生の姿は非常にまれだ。)
メノッティはローマのデザイン学校の先生でもあるので、
彼のクラスの学生がたくさん観に来ていたのだろう。

この映画は今までのイタリア映画に顕著な
本気を出すことに対する躊躇(恥ずかしさ)のようなものを乗り越えた
アメリカ式のスーパーヒーロー物語。
マジンガーZ、グレート・マジンガー、グレンダイザーなどの東映アニメ、
ハイジやキャンディーキャンディー、ベルサイユの薔薇などのアニメを見て
育った世代による作品。
ナポリやローマを舞台にしたテレビの人気刑事ドラマの世界に
アメリカのヒーロー映画に典型的な展開を重ね、
それを少しコミカルにとらえていて、
大げさで非情な(美的な)暴力的シーンは笑いを誘う。
舞台はローマ。
普段見ることのできない(多分目をそらしたくなる)ローマがカメラにとらえられている。
家庭内暴力やイタリア国内に蜘蛛の巣のように張りめぐらされている
犯罪組織の問題も生々しく描かれている。
ローマの二つのサッカーチームが対戦するダービーの展開されている
サッカースタジアムを最後の場面のロケーションに選ぶところなども
なかなか的を得ている。

汚職など様々な問題が山積みのローマに街には
この映画の主人公のような英雄が必要なのかもしれない。
この映画はローマという矛盾を含んだ美しき都に捧げられた
オマージュでもある。

配給会社はLucky Red。
2016年3月イタリア公開予定。
下記サイトにて、クリップ閲覧可能。