ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2007年6月18日 カルトッチ兄弟

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Prati地区には公共放送RAIがあるため、
制作会社や編集スタジオが大変多く、
(息子がいつものぞくところがあって、
編集をしているお兄ちゃんたちにいつも話かけている)
そのせいか地区内のアパートやお店、学校がロケ地に選ばれることが多い。
一つの道全体を、3台ぐらいの長いトラックが 陣取り、
歩道に衣装のラックが並べてあったりする。
一番多く見かける映画機材トラックはカルトッチ兄弟のものだ。

イタリアのドラマは視聴率もぐんと減り、
最近はとくにストーリーのできがよくない、演技力も低下、と
危機的状況にあるのだが、
イタリアは歴史的にも映画制作技術には長けた国だ。
照明、カメラワークの美しさ、洗練されたセット、
かっこいい衣装。現在ハリウッドのセット・デザイン、
カメラ、衣装などを担当している人にイタリア系の人が多いことからも、
やはりこの国民は制作が得意なのだという事実が伺える。
しかし脚本、演技に関してはどうもうまくいかないところがある。
それは多分、アメリカなどと違って少数の人が天才気取り、
一人でやってしまっているところがあるからなのだと思う。
チームでストーリーラインを決め、チームで脚本を書いている
昼の帯ドラマが健在なのは、
そうしたエゴがコントロールされているからなのかも。
監督や脚本家は世襲制の伝統芸能の世界みたいなところもあって、
そんな状況がイタリアの映画、ドラマ界をつまらなくしているところが
あるのかもしれない。
(日本と大きく違うのは、ドラマも映画のフィルムで撮影されていること、
俳優自身が自分の声を吹き替えていることが多いこと、など。)

先週、夫が短編映画を制作するということで、
撮影に必要な機材を借りに、例の有名なカルトッチ兄弟の倉庫にお邪魔した。
倉庫はチャンピーノの空港に近いところにあり、
離陸する飛行機の爆音が絶えない。
中には巨大なライト、ケーブル、ドリーなどが並んでおり、壮観である。
(この会社は19世紀末からの乗り物のコレクションを所有していて、
歴史物だと必ず、ここのクラシックカーなどが大活躍。)
筋肉もりもりの涼しい眼差しをしたおじさんが
プロデューサーのサルヴァトーレの用意したリストを片手に
機材をショッピングカートに入れていく。
一つ一つの機材について、取り扱いの関する注意などを
本当に詳しく説明してくれた。
イタリアの映画界を支えているのはこうした貴重な人たちなんだなあと
しみじみ思った。
PS
スカイで放送されている、テレビ業界をおちょくった新種のシチュエーションコメディー、
『ボリス』(珍しく、おさえた演技で、なかなかのでき)を観ていたら、
なんと、カルトッチ兄弟の倉庫裏側が出てくるではないか。
そういえば、倉庫をお邪魔した時、なにやら撮影していたが、
それはまさに『ボリス』の撮影だったようだ!