ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2007年4月3日 オレンジの園

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本日よりスタッロ(長椅子)の一部を大広間に持ち込み、
汚れをとる作業がはじまった。
元台所での解体作業もすすみ、やはり背もたれ部分に
とりつけられた支えの脚の部分は後世に取り付けられたもので
あることが明らかになった。
楕円形の壁に直線をなすスタッロが一体どのように取り付けられて
いたのだろうか。残念ながら広間の壁には漆喰が塗られていて
痕跡を見ることができない。
どうしても2階の広間を見なければならない。
しかしそこは現在市の所有物で勝手に入ることはできないということだ。
オラトリオ会の巨大な本拠地には現在様々な文化的機関が雑居している。
中世史研究所、市の古文書館、市立図書館、劇場・・・
新しい機関が入るたびに必要に応じてオリジナルの平面図にどんどん
手が加えられ、ボロミニの設計した全体はどんどん見えにくくなっていく。

椅子の部分を支える腕木には当時の職人の書いた数字が見られる。
最初はインクかチョークで書かれ、そのあとに鉛筆で直しが入っていたりする。
番号のふられていないものもある。どうしてだろう。
とにかく分からないことだらけだ。
全体に形を与えているストラクチャーも後世のものだ
と言い張るメンバーもいる。(懐疑的なジュゼッペ)
構造自体、何度も手が加わっている痕跡がある。
1871年にも解体作業があったようで、年号が書き込まれている。
古文書館にこもってこの広間の歴史を調べないといけないと
思うのだが、私たちの役割は飽くまで修復家だ。
歴史をやって来た者としてはウズウズしてくるのだが、
とにかくもう少し、現物から得られる情報をもっとちゃんと整理してみよう、
ということになった。
時計の塔の見える中庭のオレンジの木にはオレンジの実が
ぎっしり。
復活祭後の火曜日に戻った時にもまだなっているだろうか。