ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2007年12月20日 ブルーノ・ムナーリ生誕百記念「あの手この手」

ムナーリがいかに一般の人々に向けて発信をしていたかということを
象徴しているような小さなできごとだったと思うのだが、
もう十年以上も前のムナーリ晩年のこと、
相棒とともにムナーリを訪れようと思い、
コンタクトをとろうとしたのだが誰に聞いていいのがよく分からず、
ミラノ市の電話帳を何となくひっくり返して見たら、
MUNARI, BRUNOという項目がしっかりあるではないか!
まさかと思って電話をかけてみると、やっぱり本人宅であり、
奥さんが快くアポイントを設定してくれたのであった。
残念ながらムナーリはすでに病気が進行していて
われわれのことを誰か他の日本人の知り合いだと思ったらしく、
たくさん話してはくれたが、会話はできなかった。
広々としたアトリエに、ミラノの淡い光が差し込んでいて
ソファに沈みこむようにすわる白髪のムナーリのニコニコ顔が印象的だった。

板橋区立美術館の、裏山の雑木林に面した大きな窓のホールは
とっても気に入っているのだが、今回は『暗い夜に』のページを拡大したような
ダンボールのいインスタレーションが飾ってあり、
まるで本の中を歩いているよう。
ムナーリはあまりに分かりやすい作品を制作していたため、
イタリアではあまり本気にされず、
多分より直観的な日本人のほうが、波長が合うのだろうなとも思う。
ARGUZIA、ACUTEZZA。(綺想、機知。WIT、WHIM。)
ムナーリの俳句的着想の鋭さ。
今のイタリアにはこれが欠けてきているのだろうなあとも思う。
ナポリのゴミの山はどんどん高くなり、
ベッペ・グリッロの悲鳴のような叫びは空しくエコー。
問題の中に解決法があると言ったムナーリ。
しかし問題を直視しないことには何も始まらない。