ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2009年1月23日 ロヴェレート、ボローニャ。未来派展第一弾、国際絵本原画展審査のことなど。

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*写真はロヴェレート市内のデペーロ電車。
 電車のかっこうをしてますが本当は車。
 未来派展のオープニングに合わせて長い間改装中だった
 デペーロのCasa d’Arte Futurista(未来派芸術の家)もオープン。
 街全体が未来派デペーロ・モードに入っていた。
 未来派は料理にも「革命」を起こしたので
 それこそデペーロにちなんだ変わったお菓子でも発明すれば
 はやりそうな気もするが、それはあまりにも日本的感覚か。
*2枚目はボローニャ市役所宮殿内のサラ・ボルサ市立図書館。
 児童図書館も昨年改装され、青年部門、児童部門が充実し、
 19世紀に為替市場として用いられていたカテドラルのような空間の奥には
 図書館の貸し出しのカウンターが並ぶ。
 (空港のチェックインカウンターみたい!
 あなたはこれから空想世界に旅発つのです!と言われてるよう。)
 改装で幼児向けの素敵な空間「べべ」も設けられた。
 ゲルマンディのおかしなキャラクターがこちらをのぞいている。
 いいなあ、ボローニャ。


今回はボローニャの後、ミラノ、ロヴェレートを回るという
ハード・スケジュール。
トレントの公会議の行われたトレントの南に位置する
ロヴェレートでは未来派宣言100周年を記念する大規模な展覧会の
第一弾のオープニングに参加。
ロシア、ドイツからもコレクターや美術館の人たちが大勢来ていて
未来派の国際性を表しているような雰囲気でした。
テーマはイタリア、ドイツ、ロシアの絵画における未来派。
イタリアでのピッグバングがどのようにして東に伝播し、進化していったかが
非常によく現れていました。
これに極東の日本が加わればもっと凄かったかもしれない。
未来派展のトンネルを抜けて迷い込んだ『ジャズの世紀』という、ジャズ音楽をめぐる
絵画、映画、写真展もしかし強烈。
つかれていてあまり集中してみられなかったのですが
音楽と絵画を合わせた刺激の多い空間の中で酔っぱらってしまいました。
ロヴェレートの現代美術館。とてもいい展覧会ばかりです。
(カタログが電話帳以上の厚さであることが多いのですが・・・)
今回の展覧会のキュレータのエステル・コーエン先生にも会いました。
夕食はたまたま同じレストランだったのですが、
(ロヴェレートは小さな街です)
美術館の打ち上げディナーをやっていて
若いスタッフに対する彼女の配慮が見られ、
若桑先生のことが思い出されました。

国際絵本原画展の審査員は今回は4人。
5人目は残念ながら悪天候のため、出発できなかったそうです。
4人ともしかし、凄腕の方々だったのでとても面白い審査となりました。
まずはイギリスの絵本作家のJohn Roweさん。
技術的に完成度の高さを求めていました。
イタリアの少女向け小説で有名なBeatrice Masiniさんは
編集者としても活躍。提出された5枚のイラストのストーリー性というものを
非常に大切にしていて、キャプションも丁寧に読んでいました。
そして韓国のWon-Bok Rhie先生。
80年代後半だったと思うのですが、国際絵本原画展のかつての入選者です!
撮影の時にも審査員としてボローニャに戻ることの感激を語ってくれました。
丁寧に作品を何度もチェックしていました。
ポルトガルの隔年の新しい絵本原画コンクール、ILLUSTRARTEの
オーガナイザーであるEduardo Felipeさんはイラストレーションに
超詳しく、その「博学」ぶりにびっくり。
表現の新鮮さというものにとても注目していました。
(エドゥアルドさんは何と、thermodynamicsの教授でもあります。
とっても不思議なエドさん!
修復の考え方として、reversable natural substancesしか用いないんだという
話をしたら、「ナチュラルなものもケミカルなのです」
Everything is chemical! There is no such thing as natural….
ケミカルでないものは存在しないと言われ、
言われた瞬間に身の回りが一気に別の次元に変換されたような
感覚を味わいました。)

というわけで今回もとても洗練された展覧会となった感じです。
ボローニャ児童図書展示会で、そして日本で、展覧会の形としてみるのが楽しみです。

入選者のみなさま、心からおめでとうございます!!!