ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2009年 4月 未来派と子どもたち Futuristic Children's Corner?

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photos:
1)Freak Ando' Gallery in Bologna: tons of toys!
2)The Freccia Rossa, from Bologna to Milan in only 65 minutes
3)The Duomo in Milan, never have seen it so white
4)Entrance to the Futurist exhibition at Palazzo Reale
5)Who will wear these shoes?
6)The Film Museum in Turin, ex-synagoge
7)Street art in front of Rai headquarters
8)Dedicated to Giulio Einaudi (and Bruno Munari)
9)Yes we've been to Tuscany too....Machiavelli's house!?
10)Our flower-studded condo garden in Rome

「未来派」と子どもたち
というテーマで展覧会を相棒たちと企画したかったのが
今回のボローニャ、ミラノ、トリノ、ローマでの調査により
これは難しいものであることが判明した。
簡単に言えば、未来派のアーティストたちは
基本的に「子ども」の興味を持っていなかったのだ。
未来派という運動自体、大人の遊戯という性格が強かったからであろう。
ボローニャでは、おもちゃを含む20世紀家具のコレクター、
フリーク・アンドアンティック家具店のマウリツィオさんに会い、
1910年代から1930年代までの玩具、子ども部屋用の家具、
ポスター、学校用の机や椅子などをたくさん見せてもらったのだが、
未来派「風」のものはあっても、それが一般的ではない事がよく分かった。
アンゴレッタと言う、未来派と接触のあったアーティストの参加した
児童雑誌も一応あったのだが、
これは発行部数も非常に少なかったようである。
バッラやデペーロによって子ども用の家具も制作されたが
それは普及してはいない。
ミラノ大学図書館のレッジ文庫の絵本コレクションも
閲覧させてもらったのだがやはり、
イタリアのアヴァンギャルド的な画風の児童書は
とても数少なかった。
当時のイタリアの子どもたちはCorriere dei Piccoli のマンガに熱中。
人気作家はやはりルビーノ、アンゴレッタ、マンカ、トーファノなど。
子どもたちフォルトゥネッロ、パンプリオさん、
トーファノのボナヴェントゥーラ、クロルーロ博士、
トポリーノ(ミッキーマウス)などのキャラクターを愛した。
(ミラノで現在開催中のCorriere dei Piccoli 展は必見!)
未来派の文字の視覚的な利用はむしろ、
ファシズム時代にプロパガンダ的効果をねらった
国定教科書のイラストに用いられたようで、
そのあたりをよく見てみる必要もあるのだと分かった。

未来派の展覧会の中で、結局一番楽しく見られるのは
ミラノの王宮で行われているものではないだろうか。
もちろんロヴェレートとローマの展示もそれなりのテーマがあり、
作品もいいのだが、ミラノの展覧会では
第2未来派も取り上げられていた。
会場では小学生用のガイド付きツアーに
しばらくいっしょについて鑑賞してみた。
ボッチョーニの、判じ物のような作品、Elasticita’は
ちゃんと見た事がなかったのだが、今回それが
実は馬に乗った騎手の絵であることを子どもたちと発見。
ガイドさんの説明によって、後期印象主義による線による描写が
未来派の油絵の中でどのように変わっていったかをじっくりと鑑賞。
(会場には中学、高校のクラスも見かけたが、
小学生のグループ[先生も含めて!]が一番熱心に聞いていた・・・)
しかし未来派とは人間による活動全般を考え直したムーヴメントでもあり、
衣食住、文学、音楽、映画、そして病む事についても想いを巡らせたもので、
そうした性格をもっと浮き彫りにした展示はできないものだろうかと
考えたりもした。(考えるのは簡単・・・)
いずれにしろ、3つの主要な展覧会を見て、
絵画、彫刻でなにが起きたかを、
同時代フランスやロシアの他の派との比較の中で
概観することができたとおもう。

ルッカの国立マンガ博物館にも行ってみたのだが
行って非常にがっかりした。(いやな予感はしていたのだが・・・)
しかし、20世紀前半に挿絵画家を多く輩出したマタニア家のイラストレータたちの
特別展をやってきて、それが衝撃であった。
http://digilander.libero.it/trombealvento/pimmagini/matania.htm

ロベルト・インノチェンティというアーティストが
どういう流れの中の作家なのかが少し理解できたような気がしたからだ。
トリノでは学校博物館を見学したのだが、これは非常に楽しかった。
『クオレ』の先生の授業が体験できるワークショップもあり、
(俳優が先生を演じ、子どもたちは『クオレ』のクラスの児童に変身)
これに参加した子どもたちは、昔の学校がいかに厳しいものだったかを体験し、
学校の現在の状況をありがたいと思って帰るのだそうだ。

今回のコレクターの家訪問:
ローマに戻ってからはトリエステ地区の素敵なヴィラの中の、
未来派のコレクターの家を訪問。
そこはカーペット(デペーロ、バッラ)、テーブル、
ソファ、ランプなどの家具すべてが20世紀初頭の美術品!!!!!
座ったソファの後ろの壁にもマリネッティの奥さんの絵が飾ってあったりで
歩くのも座るのも呼吸することさえはばかられるようで
緊張しっぱなしであった。
(しかも息子もいっしょだったので、緊張度はさらにアップ!)