2007年5月4日 今年のいとしのボローニャ
*少年院
先週はボローニャ児童図書展示会での仕事でボローニャに滞在。
見本市での仕事を展開する前にまず絵本作家及びグラフィックデザイナーである
駒形氏による、少年院でのワークショップに通訳として参加。
少年院は聖フランチェスコ界隈の元修道院の中にある。
外からは病院か学校のように見える。
ゴシックの尖塔アーチの交差するレンガのヴォールトに
覆われた中庭に入って行く。
ヴォールトに気を取られていて前を見ていなかった。
天井までぴっしり届く大きな灰色の鉄格子の彼方に少年たちはいた。
収容されている青少年たちは全員、外国人だった・・・
このワークショップに関しては駒形氏、およびアシスタントとして
取材に入った相棒が正式な記事を書くので多くは語らないが、
一生忘れることのない体験であった。
少年院の所長さんは女性で三人の子どものお母さん。
子どもたちを信用していると言うのだが、
彼らの返す信頼というものがいかに複雑な要素を含むものであるか
説明してくれた。
この少年たちは出所してからはどうなるのだろう。
義妹夫婦が東南アジアの子ども(できれば二人兄弟)を
養子として迎えることになっているが、
彼らのこの選択の持つ意味が少しでも分かったような気がした。
この二人の子どもは愛されて育つのだ。
*ボローニャ児童図書展示会2007
今年の児童図書展示会はロンドンのブックフェアのすぐ後に続いたにも
かかわらず、外国人のヴィジターが4%増。
相変わらずフランスの本が面白かったが、
(毎年新境地を開拓しようと思うのだが
結局ティエリー・マニエ・マニアで終わってしまういけない私だ・・・)
イタリアでも小規模な出版社が頑張っている。
今年、国際絵本原画展の審査員を努めた
ファウスタ・オレッキオのオレッキオ・アチェルボ出版
(ロダーリの詩にちなんだ名前で青い耳、まだ熟しきっていない耳と言う
おもしろい命名)の絵本がなかなかよい。
装丁には大好きな段ボールが使ってあるのだが
小さい子どもにはあまり向かない、ちょっと変った作りだ。
今年は嬉しいことに児童図書展示会のドキュメンタリに
イタリアの週刊誌、INTERNAZIONALEでもおなじみのアーティスト、
「ヨッチ」に登場してもらうことになった。
(ヨッチは、今年ボローニャ国際絵本原画展に入選!)
最近は「イタリア新聞」のフォーマットにどんどん深みが増し、
そのライヴ性がとらえられたらいいなあと思い、
市内をめぐりながら「ボローニャ新聞」を[描/書]いてもらうことに。
生活感たっぷりの、日本人の女の子のやさしいまなざし、
うまく編集できるかどうか、どきどきなのであるが。
児童図書展期間中、見本市会場内に閉じ込められてしまう
カメラマンのマッテーオも、やっと市内に出られる、とおおはしゃぎ。
ヨッチといっしょにみんなで歩いた回廊のボローニャ。
会場ではアンデルセン賞受賞作家、
ウォルフ・エールブルッフにもインタビュー。
ふんわりとした、軽やかなオーラの感じられる、素敵な方であった。
イラストレーターの中で、ストーリーが書けずに悩んでいる人に対し、
どんなアドヴァイスをしますか、と聞いてみたところ、
「いま分からなくても経験を積み上げて行くことによって
いろいろと分かってくる場合がある。
感覚を研ぎすませていれば、
頭の上にりんごが突然落ちて来るような、そんな瞬間が必ずあるだろう。
大人の世界を観察していて、大人の世界が本当におかしな
ところだと思った、あの子どものころのことも忘れずに。」
最新作、『アヒルと死神とチューリップ』は
友人のために昔描いた三枚のしおりがもとだと言う。
描いた当時は、この3つの要素のつながりが分からなかったが、
最近分かってそれが今回の絵本になったのだそうだ。
*むかしむかし
ボローニャに仕事で戻るたびに昔の自分がよみがえる。
ボローニャにはイタリアのお盆に当たる日に到着。
霧のけむる夜。市庁舎の高い壁がその中世らしさをかもしだし、
少し怖かった。
早朝、最初に訪れたのはチェルトーザの墓地だ。
墓参りの儀礼見たさに。
聖史劇について研究するはずだったが、ボローニャには文献が少なく、
反宗教改革期に設置された「イエスの墓」の儀礼とそれをめぐる
信徒会とボローニャの主要な芸術家たちとの2世紀にわたる
コラボレーションについて研究することになった。
4つの教会内に毎年「展示」された、
イエスの死と復活を記念する豪華な装置!
(4つの教会とその周辺が見事にライトアップされ、
ボローニャ市内全体はイエルサレムに変身!)
論文を本にするという話は子どもが生まれて進めることができなかったのだが、
それはそれでいつか何かの形にできるだろう、
違う形をとるかもしれない、新しいものを作るきっかけかもしれない、
あせらずやっていこう。
先週はボローニャ児童図書展示会での仕事でボローニャに滞在。
見本市での仕事を展開する前にまず絵本作家及びグラフィックデザイナーである
駒形氏による、少年院でのワークショップに通訳として参加。
少年院は聖フランチェスコ界隈の元修道院の中にある。
外からは病院か学校のように見える。
ゴシックの尖塔アーチの交差するレンガのヴォールトに
覆われた中庭に入って行く。
ヴォールトに気を取られていて前を見ていなかった。
天井までぴっしり届く大きな灰色の鉄格子の彼方に少年たちはいた。
収容されている青少年たちは全員、外国人だった・・・
このワークショップに関しては駒形氏、およびアシスタントとして
取材に入った相棒が正式な記事を書くので多くは語らないが、
一生忘れることのない体験であった。
少年院の所長さんは女性で三人の子どものお母さん。
子どもたちを信用していると言うのだが、
彼らの返す信頼というものがいかに複雑な要素を含むものであるか
説明してくれた。
この少年たちは出所してからはどうなるのだろう。
義妹夫婦が東南アジアの子ども(できれば二人兄弟)を
養子として迎えることになっているが、
彼らのこの選択の持つ意味が少しでも分かったような気がした。
この二人の子どもは愛されて育つのだ。
*ボローニャ児童図書展示会2007
今年の児童図書展示会はロンドンのブックフェアのすぐ後に続いたにも
かかわらず、外国人のヴィジターが4%増。
相変わらずフランスの本が面白かったが、
(毎年新境地を開拓しようと思うのだが
結局ティエリー・マニエ・マニアで終わってしまういけない私だ・・・)
イタリアでも小規模な出版社が頑張っている。
今年、国際絵本原画展の審査員を努めた
ファウスタ・オレッキオのオレッキオ・アチェルボ出版
(ロダーリの詩にちなんだ名前で青い耳、まだ熟しきっていない耳と言う
おもしろい命名)の絵本がなかなかよい。
装丁には大好きな段ボールが使ってあるのだが
小さい子どもにはあまり向かない、ちょっと変った作りだ。
今年は嬉しいことに児童図書展示会のドキュメンタリに
イタリアの週刊誌、INTERNAZIONALEでもおなじみのアーティスト、
「ヨッチ」に登場してもらうことになった。
(ヨッチは、今年ボローニャ国際絵本原画展に入選!)
最近は「イタリア新聞」のフォーマットにどんどん深みが増し、
そのライヴ性がとらえられたらいいなあと思い、
市内をめぐりながら「ボローニャ新聞」を[描/書]いてもらうことに。
生活感たっぷりの、日本人の女の子のやさしいまなざし、
うまく編集できるかどうか、どきどきなのであるが。
児童図書展期間中、見本市会場内に閉じ込められてしまう
カメラマンのマッテーオも、やっと市内に出られる、とおおはしゃぎ。
ヨッチといっしょにみんなで歩いた回廊のボローニャ。
会場ではアンデルセン賞受賞作家、
ウォルフ・エールブルッフにもインタビュー。
ふんわりとした、軽やかなオーラの感じられる、素敵な方であった。
イラストレーターの中で、ストーリーが書けずに悩んでいる人に対し、
どんなアドヴァイスをしますか、と聞いてみたところ、
「いま分からなくても経験を積み上げて行くことによって
いろいろと分かってくる場合がある。
感覚を研ぎすませていれば、
頭の上にりんごが突然落ちて来るような、そんな瞬間が必ずあるだろう。
大人の世界を観察していて、大人の世界が本当におかしな
ところだと思った、あの子どものころのことも忘れずに。」
最新作、『アヒルと死神とチューリップ』は
友人のために昔描いた三枚のしおりがもとだと言う。
描いた当時は、この3つの要素のつながりが分からなかったが、
最近分かってそれが今回の絵本になったのだそうだ。
*むかしむかし
ボローニャに仕事で戻るたびに昔の自分がよみがえる。
ボローニャにはイタリアのお盆に当たる日に到着。
霧のけむる夜。市庁舎の高い壁がその中世らしさをかもしだし、
少し怖かった。
早朝、最初に訪れたのはチェルトーザの墓地だ。
墓参りの儀礼見たさに。
聖史劇について研究するはずだったが、ボローニャには文献が少なく、
反宗教改革期に設置された「イエスの墓」の儀礼とそれをめぐる
信徒会とボローニャの主要な芸術家たちとの2世紀にわたる
コラボレーションについて研究することになった。
4つの教会内に毎年「展示」された、
イエスの死と復活を記念する豪華な装置!
(4つの教会とその周辺が見事にライトアップされ、
ボローニャ市内全体はイエルサレムに変身!)
論文を本にするという話は子どもが生まれて進めることができなかったのだが、
それはそれでいつか何かの形にできるだろう、
違う形をとるかもしれない、新しいものを作るきっかけかもしれない、
あせらずやっていこう。