ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2010年 3月 ボローニャ児童図書展示会、感想文 Bologna Children's Book Fair 2010

今年のボローニャ・ブックフェアは熱を出した直後に乗り込むこととなり、
頭の中がぼおおっとしたまま過ごしてしまったような気もします。
一日目はブラティスラヴァ世界絵本原画展のグランプリ賞を受賞した
タシエスさんにインタビュー。
もともとジャーナリストである彼は子どもたちをとりまくいじめなどの
深刻な社会的問題に注目し、なんとか自分も絵本を通して
貢献できないものだろうかと、考えながらの絵本作りをしたいと
熱く語ってくれました。
国際絵本原画展と巡回する、いじめがテーマの
『盗まれた名前』(もっとうまい訳があるとおもう)の原画、なかなかよいです。
出版まじかの絵本のダミーを見せてもらいましたが、
最後のところは胸が痛くなりました・・・。
2日目は国際絵本原画展審査員の素敵な広松由希子さん
ブックフェア・レポートを撮影。
今年のラガッツィ賞のオペラ・プリマ部門のメンションを受けた、
レバノンのDar Onboz出版の紹介がとくに印象的でした。
ここの編集者のNadine Toumaさん自身も絵本を執筆。
Seven + 7 というを描いたような絵本を朗読してもらいました。
魅力的なナディンさん、透き通った声、魔法のような所作。
自然に観客が集まってきました。
3日目は審査員講評会日本人入選者の方々のインタビュー。
講評会では審査のとき、どこらへんで議論があったのか、
とてもなまなましく語ってくれました。
出版社の目、アーティストの視線。
立場が違っても、目指しているものはどちらにとっても刺激的な作品。
入選者の山田さんの、スイスの出版社との劇的なアポにも立ち会うことができ、
とてもおもしろかったです。
ブックフェアは絵本のできあがる、火花も飛び散る舞台裏!
世界には本当にすばらしい編集者たちがいます。

日本人の入選者のみなさま、お会いすることができ、うれしかったです。
梅干し製造工程を子どもたちに(おとなにも)詳しく分かりやすく語る絵本、
日常のふとした気持ちを語る絵物語、
不思議な版画・・・日本の入選作品は日本人の描いたものだと
分かるものであることには毎年驚かされます。

駒形克己さんLittle Tree、ラガッツィ賞のフィクション部門でメンションを受けました。
駒形さんの始めた少年院でのワークショップ・プロジェクト、
今年は恋について思春期の子どもたちに語りかけるChiara Rappaccini,
マフィアについて子どもに分かりやすく解説した小説を書いた
Luigi Garlandoさんなどが参加し、どんどん輪が広がっています。
このプロジェクトがきっかけとなり、
少年院で教える教員養成を目的とした特別講座が大学で
できるかもしれません。
ひとつがふたつに、ふたつがみっつに・・・・
わっかがどんどん増えていきます

フェア終了後、ボローニャの街の中では
Bologna Citta' del Libro per Ragazzi,
ボローニャ児童図書フェスティヴァルBOLIBRI'が開催。
一日に同時にさまざまな場所で、ワークショップ、
朗読会、サイン会等々がどどどっと行われました。
そして実はこのフェスティヴァルをしめくくる催しとして
ボローニャの姉妹都市である板橋区の常盤台小学校合唱部
常盤台天祖神社神明囃子のコンサートが行われたのでした!