ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2010年 「七つの大罪プラスワン」展 SEVEN



夫のいとこデボラの夫、ロベルト・ロンカは新進芸術家をプロモートするための
一連の展覧会を2、3年まえからキュレート。
出身地のカンパーニャ地方の街やデボラの出身地であるヴェネト州を中心に
会場を探し、市に働きかけをしている。
果たして儲かる仕事なのかどうかは謎なのだが、
今のところ、どこの会場も素晴らしいものだ。
昨年開催された人権侵害をテーマとした公募式の展覧会は
ナポリに近いカゼルタの広大なレッジャ宮殿の旧絹生産工場跡で行われ、
アムネスティーインタナショナルなどの団体の協力もあった
大変質のよい、社会性のあるものであった。

今回の会場はナポリから10キロほど離れた、
ヴェスヴィオ山のふもとの街、サン・ジョルジョ・イン・クレマーノ市の
広大な公園付きのヴィラ・ヴァヌッキ。       。
18世紀に建設されたこのヴィラは1980年の地震で大打撃を受けたのだが
最近改装され、市の文化財となった。 
ヴェスヴィオ山と海沿いの間に建てられた
ブルボン王朝時代の数々のヴィラのうちの一つだ。
この街の出身である有名な俳優、マッシモ・トロイージ主役の映画にも
セットとして登場する。
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ロベルトはこの会場にて、1年間にわたり8つの展覧会を展開する予定だ。
テーマは『七つの大罪』。
その記念すべき第一回のテーマは「暴食」、グラトニーだ。
公募を経てロベルト夫婦らによる審査を通過した121人のアーティストが参加。
作品は一人1点。技法も素材も様々だ。
ヴィラのテラスには鉄製の大型の彫刻も展示してあった。

この「暴食」というテーマ、やはり同じような解釈をした作家が何人もいた。
これは細かく分析をすれば図像学上非常におもしろいものとなり得るのだが、
とくに目立った傾向で言えば
1)キリスト教世界において「罪」そのもの象徴であるリンゴをかじる場面。
アップルコンピュータの食べかけリンゴのロゴを扱った作品も一点あり。
2)マクドナルド、ジャンクフード系。
3)イタリアの喜劇俳優ソルディがスパゲッティーを食べる場面に想を得た
スパゲッティ系。
4)自らを食する自虐系。
5)きれいにセットされたテーブルを表現する静物系。食器も含む。
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このほかに、人間の最初の食事である母乳系作品が2点。
拒食症の若い女性の有名な写真を題材にした作品が2点。
全体的に肉食を罪悪とする傾向が見られ、魚を食している人物は見当たらなかった。
テーマは大罪であるため、やはり食に対する「罪悪感」の表現が主流で、
しかもそれは孤独な行為として描かれている。

しかし、「食」は共同体の共生を祭る儀礼でもある。
罪悪感を超え、また、それを一方で意識しつつ食することを楽しんでしまうという
「罪」をおかす作品がもっとあってもいいのではないかと思った。
自分の夫の作品であるからほめているわけでないのだが
食することをゲーム化してしまったヴィデオ・ゲームの作品はその中で
なかなか個性を発揮していたと思った。
息子のあんぐり開いた口に向かって飛んで来る食べ物を
なるべく多くキャッチし、
たくさん食べれば食べるほど点数の上がるゲームだ。
背後には消化の過程を説明したドキュメンタリが流れている。
(私もコンピュータにとりつけるバロック風額を制作し、ちょっと参加)
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もう一点、カッラーラ在住の彫刻家ドミニクの作品も実に楽しい「罪おかし」の
できる、ルーレット付きのインタアクティヴ彫刻だ。
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そしてもう一つ誰も取り上げなかったのは・・・
ゴミ問題だ。
食することにより出る夥しいゴミ。
南部で行う展覧会である故、このへんもつついてほしかったかなあ、と思ったり。
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ロベルトのキュレートにより毎回参加するおなじみのアーティストたちの
グループがだんだんできあがり、意見交換が楽しい。
次回4月の「嫉妬」展には自分も応募してみようかなあと考えたりもしている。
perche’ no?