ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

イエラ・マリのエンドレス絵本 Le storie infinite di Iela Mari

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日本でもほるぷ出版から絵本が出てるイエラ・マリの原画展「虫めがねで見た世界」、
ボローニャに続きローマでもボルゲーゼ公園内の児童館にて、1月30日までやっていました。
この展覧会はボローニャをベースに、イラストレーション、漫画らに関する
展覧会、イヴェント、ワークショップなどを精力的に展開している
ハーメリン協会のメンバーによりキュレートされたもので、
マリの絵本をほぼすべて紹介。
初めてマリの世界を総合的に紹介した展覧会として高く評価されました。
ガブリエラことイエラさんはミラノにてひっそりとくらしているのですが、
なによりも、ハーメリンのみんなの優しさ、彼女に対する情熱にあふれた敬愛が
イエラの世界への扉を開くかぎとなったのだと思います。

ローマの児童館での展覧会は、スペースの関係もあり、
子ども向けにはワークショップ付きのガイド付きツアーの形となっていました。
マリの世界。
それは、一つの形であれ、一つの関係であれ、「一つ」を通して無限を語るもの。
「一つ」」のなかには宇宙が。
とくに『まあるいまあるい』という絵本では
「円」という形が色々な物に変身し、わたしたちに向かって力強く話しかけています。

子ども向けのツアーはまず、マリの絵本の特徴に関する紹介からはじまりました。
それは:
こどばのない絵本
おわりのない絵本
である、ということ。

初版はスパイラルによる製本で、さらに「無限なる循環」を強調するものでした。
ツアーではさらに、子どもたちにマリがどのように
絵本のプロジェクトを作って行ったか、テクニカルな面での説明が続きました。

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「食べちゃうから食べて」という、弱肉強食の循環世界を描いた絵本、
これはマリの絵本のなかで一番気に入っているものです。

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ツアーでは子どもたちにマリが実は白黒で原画を用意し、
色指定をトレーシングペーパーの上に書き込んでいった様子が説明されました。

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どこまでも続いて行く地平の「永遠」。
カードを並べていくと、色々な風景が「描け」ます。
これは昔からあるカード遊びに想を得たもの。

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形の美しさ、そして余分なものを一切排除した、純化されたコンセプトという点では
マリと交流のあったムナーリや駒形克美氏の絵本とも通ずる世界だと言えましょう。
駒形さんの『涙』。
こちらの絵本は、主役である涙の形は無変、
たった一つの涙がどんどん世界を、心を変えて行きます。
そしてたった一つの涙をわたしたちは共有していく。

マリの終わりが最初にもどる絵本、
死と再生、季節の循環、回帰していく人生・・・さあ、もういちど、やってみよう!
感覚の鋭い子どもたちはいったいどんなことを直感していくのだろう。

ツアーのあとのワークショップでは子どもたちは
『木の歌』のダミー本でマリがトレーシングペーパーを使って表現した
季節の変化を実際に体験。
これは息子の作品。

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イエラ・マリの息子さんはミケーレ・マリ。
本屋を経営する友人パオロのよると、
現代イタリアで最も優れた作家なのだそうです。
ミケーレの詩集をまず購入、どきっとする作品群。
とりあえず今日はここまでにして、
次回、紹介してみたいと思います。