ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2007年5月14日-16日 オラトリオ仕上げ作業2

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2007年5月14日 
7つのブロックに支えの構造が取り付けられ、
蜜蝋を塗り付けると言う作業がはじまった。
私は最後まで残ってしまった枠の一部を今朝彫り終えた。
オラトリオ全体の修復作業の監督である建築家が作業を見に来たが、
結局、工房のとった方針に100%賛成していない様子であった。
今までの木製家具修復の歴史と、文化財そのものの修復の歴史があり、
現在われわれのいる位置での、われわれの判断は、
その積み重ねや反省から出て来ているはずなのだが。
建築家の視点と現場にいる修復家の視点は確かに異なる。
うまいぐあいに意見が合えば、とてもいい仕事ができるのだろう。
(ボロミニは現場出身の人間だ。
あの時代は、芸術と職人技術とが融合していた時代だ。)
今回の作業ではバランスの大切さ、
大勢の専門家の意見をまとめる難しさというのを
垣間みたような気がした。

5月16日 
本日作業が完成した。
7つのブロックが2つに分けられ、
広間入り口の両側に並べられた。
最後の最後まで色のチェックや蝋の残ったところを
拭き取っている人たちがいる一方で
片付け作業が始まった。
きれいに磨かれた長椅子は落ち着いた焦げ茶色になった。
ベージュや薄いピンクのテラコッタの床にもよく合う。
なかなか壮大な眺めだ。
2階にあるオリジナルのテーブルがもし、
この楕円の広間に戻ってくれば、更に当時の雰囲気が出せるだろう。

元台所の壁からはずした時はどうなるかと思ったが、
工房長も思惑通りことが運んで大満足だ。
支える枠の構造の設計には
ローヴァーのエンジニアだったアレが協力。
(アレは退職してから奥さんと、一軒家をゼロから建てたスーパーマンだ。)
元弁護士だったマウリといいコンビだ。
破損部分の再現には色々な仲間が協力したのだが、
みなそれぞれ技能も形の解釈の仕方が多少異なっていても
全体として見ると揃っているように見えるのだから不思議だ。
(もちろん、あら探しをしようと思えばいくらでもできるのだが!)
ちょっと次元の違う話なのだが
イタリアのオーケストラは奏者がそれぞれ自分勝手に弾いていても
総合体として鑑賞できる、という友人の言葉を思い出す。
これからボローニャの見本市のドキュメンタリの編集に合わせて
オラトリオでの修復作業の素材の編集をしなければならない。
このすばらしい体験を振り返ることができるので楽しみだ。