ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2007年5月12日 チェゼーナ

イメージ 1

日本におけるムナーリ展用のコーディネートの仕事で
相棒とともにアドリア海に近いエミリア・ロマーニャの街、
チェゼーナへ。
ムナーリの直弟子であったベーバさんは
現在チェゼーナのムナーリ小学校にて、
ムナーリ・メソッドによるワークショップを確立させるため
研修を展開している。
その一環で金曜日朝に一年生を対象とした
本作りのワークショップが行われるというので
見学させていただいた。
偉大なミラノ市民を祀る殿堂に葬られている芸術家、ムナーリ。
そのムナーリに惹かれた校長先生やチェゼーナ現市長さんなどの
キーパーソンの働きにより、このプロジェクトは推進されている。
ファエンツァの国立陶芸史博物館で陶芸のワークショップを確立させた
イヴァーナさんの協力により、
陶芸のワークショップも併設されている。
ベーバさんのワークショップは本作りをテーマにしたものだった。
ワークショップの教室の入り口には、日本ののれん感覚で
いろいろな素材のきれいなものが、たくさん垂れ上がっている。
この不思議なカーテンをくぐって子どもたちは
特別な空間に入って行く。
色々な質、重さ、色の紙が準備された口の字型のテーブル。
動きやすいように、今回は立ったまま作業をする。
子どもたちはそのまわりに集まり、
ベーバさんの与えるインプットをたよりに
今日の作業がどういうものか理解していく。
紙にはいろいろな性質のものがある。
ちぎったり、折ったり、丸めたりすることによって
性質を変化させられる。紙の出す音も違う。
選んだ紙をきれいに二つ折りにし、
それをまた広げて重ねていくと本になる。
めくってみると、何か展開のようなものが見られる。
本の形ができたら、ホチキスでとめ、
今度は手でちぎったりすることによっていろいろな形を作り、
ページにのりでそれらをはることによって、
お話のようなものができる・・・
使用される道具は本をとじる時のホチキスと
スティックのりだけだ。
ベーバさんは子どもたち一人一人の作業にコメントをしながら
それぞれのおもしろい点を浮き立たせる。
一人一人の発見した方法のようなものを
少し言葉の形にしてあげることによって
フィードバックをし、作業の進展を刺激。
ベーバさんのほめ言葉に子どもたちの目がきらりと光る。
まぶしい。
できあがったのは19冊の実に個性豊かな本たち。
最後に一冊ずつ、丁寧にみんなで「読み取り」、特徴を簡単に説明。
子どもたちは作品を大事そうに手にもって教室にもどっていく。
今回使用された紙は、ちぎり易い薄い紙やアルミフォイル。
色彩コーディネート、形の記号化、ナラティウ゛などの様々な
要素の外に、優しく扱う、大事にする、などの情緒教育も
含まれているなあと思った。
帰りの電車の中でムナーリの文章を読みながら、
相棒と展覧会のキャッチフレーズを考える。
ムナーリのフレーズは俳句のようだと思う。
簡潔な文の中には広い、深い宇宙が感じられる。
一つ一つの言葉がお互いにからみあっていくことにより、
魔法の文句のようにもなり、訳してみると
何通りにも解釈できたりすることも。