ナンニ・モレッティ主催「ビンビ・ベッリ」イタリア新人映画監督デビュー作品祭２０１２
Premio Primi Passi「よちよち歩きの賞」、それは
かわいい靴用の箱の中に糊で固定された
赤ちゃんシューズ。
その年に生まれて初めて映画監督をしたイタリア人監督に与えられるトロフィーだ。
映画制作を奨励するモレッティらしいアイディアである。
（夫の弟もモレッティに背中を押されて
監督業、脚本執筆に励むことになった。）
最優秀男優賞、最優秀女優賞、そして上映後の
最もおもしろかったディスカッション賞というものもある。
フェスティバルの開催場所はトラステヴェレ界隈にある
ナンニ・モレッティの経営する映画館、Nuova Cinema Sacher。
モレッティの大好きなチョコたっぷりのサハー・トルテにちなんだネーミングだ。
この建物は１９２０年代に建てられた国の労働者用の娯楽施設で
屋内と屋外に映画館がある。
屋外の映画館は古代ギリシャの半円形劇場の形をとっていて
トラヴェルティーナという大理石に敷き詰められている。
バールではもちろんザハー・トルテが食べられる。
また、映画、文学を専門とした小さな本屋さんもあり、
上映前、上映後にもゆっくりくつろげるようになっている。
（お手洗いもたくさんあります！）
今年のラインアップは以下の通り。
なかなか好評だった『ジャコモの夏』というドキュメンタリ－も入っている。
典拠 http://www.cinemaitaliano.info/conc/00314/bimbi-belli.html
| DOCUMENTARI ITALIANI PROIETTATI | sezione | trailer | recensioni |
| Il Mundial Dimenticato – La vera incredibile storia dei Mondiali di Patagonia 1942 (di Lorenzo Garzella, Filippo Macelloni) | Concorso | http://www.cinemaitaliano.info/img/trailer.gif | http://www.cinemaitaliano.info/img/note.gif http://www.cinemaitaliano.info/img/note.gif |
| L'Estate di Giacomo (di Alessandro Comodin) | Concorso | http://www.cinemaitaliano.info/img/trailer.gif | http://www.cinemaitaliano.info/img/note.gif http://www.cinemaitaliano.info/img/note.gif http://www.cinemaitaliano.info/img/note.gif http://www.cinemaitaliano.info/img/note.gif |
『ニュー・シネマ・パラダイス』でお母さん役を演じた
女優の友人はアブルッツォの大自然が美しく描かれている
Cavalli『カヴァッリ』（馬）とシルヴィオ・オルランド主演の
Missione di pace 『ピース・ミッション』の２作品に登場！
昨夜は最終日で、
今年度（学校の年度に沿い、昨年９月から今年の８月まで）の新人監督作品の中でも
もっとも興行成績のよかった
Scialla! 『シャッラ！』（落ち着けよ！という意味のローマ方言）が上映された。
http://www.youtube.com/v/ZzQVRK2KbAM&rel=0&autoplay=1
『シャッラ』はローマに住む初老の元高校教師兼作家が主人公。
自分がラテン語を個人教授をしている高校生が
実は自分の息子だと昔の恋人に打ち明けられ、
アフリカに転勤になるのでしばらく息子を預かってくれと頼まれる。
しかし、一切自分が父親であるということは秘密にしておいてくれと言われる。
この息子はとても感じがよいのだが、
勉強が大嫌いで、学校をよくさぼり、落第が危ぶまれている上に
危ない人たちとつきあっている。
父親は最初は彼のことを放っておくのだが、
高校から保護者として面談に呼びだされ、先生の叱責を受けることにより、
父親として目覚める・・・！
父親役は堕落気味のインテリ役がぴったりのファブリツィオ・ベンティヴォリオ。
予想通り、フェスティヴァルの最優秀男優賞取得！
かなりの票を獲得していた息子役のフィリッポ・シッキターノは
この映画での好演が話題となり、
フランチェスカ・コメンチーニの新作映画に抜擢された。
彼はまったく俳優としての経験はなく、
その自然な演技は絶賛され、
中高生のアイドル的存在とまでなった。
上映後には、モレッティ司会でディスカッションが展開され、
監督やフィリッポが制作秘話を語ってくれた。
フィリッポは、大先輩のファブリツィオに
「この役は自分を演じていればいいからやりやすいけど、
これからは自分とまったく違うタイプの人間を演じることに
なるかもしれないから、がんばるように」と
言われたそうである。
ファブリツィオはコメンチーニと仕事をして、
すごく勉強になったと感慨深く語った。
これからどんどん演技の技を磨いて行くことだろう。
ファブリツィオは、この「爆弾」のような新人、
フィリッポに「食われてしまう」のではないかと心配して、
自分の役に特徴を持たせるために
パドヴァ方言のアクセントを使うことにしたそうである。
この映画にはスロヴァキア出身の女優バルボラ・ボブローヴァが
老高校教師が自伝執筆に協力していた
元ポルノスターの役を演じた。
彼女にこんな役もこなせるとは思わなかった、と、
映画評論家の間でもかなり話題になった。
なんと、４日間ですべてをこなしたということだ。
舞台となった高校は、ヴィア・ジュリアのヴィルジリオ高校。
映画の中でも実名で出てくる。
トラヴェルティーナ大理石の壁にはめ込まれた銀幕
モレッティと新人監督ブルーニ歓談
モレッティと新人監督ブルーニ歓談
モレッティ、ヴィニーチョ・マルキオーニ、新人のフィリッポとブルーニ監督
今年の最優秀映画賞は、しかし、このブログでも以前紹介した
『私はリー』が獲得！
『シャッラ！』はとても好感の持てる軽快なコメディーなのだが
（外国人の私でもおかしくてげらげら笑ってしまった）
監督が自ら意識しているように
脚本にいくつか問題があり、カメラもほとんど静止状態での撮影が中心。
それに比べ、『私はリー』は情緒があり、
物語はシンプルなのだが脚本もよくてきていて
撮影にもより精巧さが感じられた。
最優秀女優賞もやなり、リーを演じた中国人の女優、Zao Taoが獲得。
さて、トロフィーなる箱の中に飾られた赤ちゃんシューズを受けとる
『私はリー』の関係者はしかし、一人も来ていなかった。
これはイタリア映画の世界がローマを中心として
回転しているのであり、
（その世襲制も手伝って）ある意味で閉鎖的である、という
性質を象徴的に語っていると言えよう。
今回参加している映画のほとんどはローマがベースに制作されている。
『私はリー』は監督を含め、スタッフのほとんどが北イタリアの人たちだ。
セグレ監督にもしかしたら会えるかもしれない、と
私のように楽しみにしていた人たちもたくさんいたと思う。
フェスティヴァル終了後、友人のスコットランド出身の女優さんの
１３歳の娘さんが『シャッラ！』息子役のかっこいいフィリッポにアタック！！
サインをもらった後は、素敵なツーショット。
ここには載せられないが、とにかく幸福を絵に描いたような写真だ。
