ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

音楽の街、クレモナ

今週は英語塾の出張でマルケ州のアスコリ・ピチェーノに続き、
トッローネ菓子とヴァイオリン製作で有名なクレモナの街を訪れました。

イタリア各地で伝統工芸に携わる職人たちがどんどん減っている一方で
16世紀から盛んであったヴァイオリン製作を奨励する
クレモナの街では旧市街にヴァイオリンやヴァイオリンの弓の制作者の工房もが
いくつもみられました。
ヴァイオリン工房マップには日本人の制作者の工房の住所が記載されていました。
その一つは以前仕事でお会いすることのできたマエストロ石井高氏の工房。

『川の流れはヴァイオリンの音』。
ドキュメンタリーとドラマを合わせた新しいdocu-dramaのジャンルを
打ち出したこのnhkの詩情豊かなこの作品、今でも忘れられません。
クレモナが舞台のこの作品の制作にはマエストロも関わっています。

夏には音楽学校、ストラディヴァリ・ヴァイオリン製作者協会、
クレモナ市などが協力してCremona Summer Festivalを開催。
世界中から若者たちがヴァイオリンのマスターコースに参加し、
開催期間中には各種コンサートが開催され、
それに付随してそのほかにもさまざまな催しが行われ、
あまりもの暑さで昼間はほとんど人の歩いていない旧市街は夜の7時頃から
まったく別世界に変身。
美しいドゥオーモはきれいにライトアップされ、
お店も遅くまで開いています。
ヴァイオリンやチェロを背負って街を観光する高校生たち。
私の泊まったホテルも学生たちでいっぱいでした。
昼寝をしようと思ったらヴァイオリンの練習が始まり、
思わす聞き入ってしまい、昼寝どころではありませんでした。
奏者はお隣の部屋の東欧から来た金髪の女の子でした。

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朝は誰もいないドゥオーモにお参り。
真っ暗な中、オルガンの太いパイプがにぶく光っていましたが
何と、調律中でした。
少し怒りっぽいマエストロが若そうなアシスタントとともに
一つ一つの音を調整。
体の奥まで振動するすばらしい音。
感激してしまいました。
このオルガンは1879年に作られたパイプを使った
マショーニ社製のオルガン。
(マショーニ社のサイトに行ったら、東京のドゥオーモにも
この会社のオルガンが設置されていると書いてありました!)

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市役所宮殿のコレクションの、アマーティやストラディヴァリが制作した名器たちは
今でも生きています。
フランスのシャルル9世王のヴァイオリンもここにあります。
毎朝、音楽学校の先生が来て、コレクションの開館前に違うヴァイオリンを調律します。
この調律の様子は。ドゥオーモのブックショップで
予約をすれば聴くことができるのだそうです。
いつか、予約して聴いてみたいです。
ストラディヴァリの作った名器の音。

ストラディヴァリ・ヴァイオリン博物館は市立美術館の中にありますが、
工房で使用されていたヴァイオリンの型のコレクションまでありました。
日本人のカメラマンがそれらを一つ一つ丁寧に、まるで一つの儀式のように
撮影をしていました。
きっとそのうち、ストラディヴァリに関する新しい番組が
日本で放送されるにちがいありません。