ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

ヴェネツィア・ビエンナーレ2013年


ヴェネツィア・ビエンナーレ2013年版。
夏に一週間、アカデミア橋のすぐ近くにアパートを借りて
見学しました。
ビエンナーレはGiardini「庭園」、Arsenale「造船所」という
入場が有料の会場のほかに
ヴェネツィア市内に点在している入場無料の国別展示があり、
一週間でも全部見切れないほど。
こちらの市内特別展示は、普段入ることのできない宮殿や
個人の住宅などを見ることができるので
ある意味で知られざるヴェネツィアを楽しむことができます。
ヴェネツィアという街がいかに美しさに満ちあふれているか、
訪れるたびにため息が出てしまいます。
耽美的な美に溺れてみたいのであれば、ぜひヴェネツィアへ・・・・

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コンセル手前の小さな広場
早朝のピアノや歌の練習の様子が聞こえてきます


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音楽院の中庭の中国人アーティスト、サイモン・マーの作品
『踊る水滴」


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アルメニアのベネディクト会、メキタリスト会の
ゼノピオ宮殿
(1850年からメキタリスト会所有)
鏡の間

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訪問のサンタ・マリア教会でのインスタレーション
Zhong Biao 钟飚の幻想的宇宙



観光客にはしかし、たいへん難しい街でもあります。
有名な広場でバールを間違えると
とんでもなく値段が高かったりします。
地元の人「も」行くレストランを探すのも結構大変です。
地元の人に勧められて行ったレストランでも一軒、
夫や友人たちがヴェネツィア人ではないと認めた瞬間
オーナーの態度が変わり、あまりいい気分ではありませんでした。
夫が懸命に「ぼくも同じヴェネト人!」と頑張ったのですが。
イタリア人観光客でも苦労するところなので、
つい先頃、『ヴェネツィア(とヴェネツィア潟)ローコスト』という
サヴァイヴァル用のガイドブックが出たほどです。

今年のビエンナーレは前回のものと比較すると
前回の方がよかったと言う人も多いようですが
市内のその他の国々の展示(たとえはアゼルバイジャンやアルメニアなど、
中近東や中央アジアの国々)、
そしてアルセナーレの会場の、船で渡った反対側の会場の
中国人若手アーティスト展など、爆発的な創造力を感じされる
パワフルな展示もあり、見応えは十分ありました。


以下は造船所地区の中国展入り口


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豪快な作品が多々ありました・・・
本当に今回は「中国人のビエンナーレ」と言われるくらい、
艾未未 を含み、中国からの参加がたくさんありました

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こちらは中国館の作品
外の庭がガラスに映っています


各国のパビリオンの点在する「ジャルディーノ」の会場では
今年のピエンナーレのテーマ展、
『百科事典的ビル』Palazzo Enciclopedicoが開催されていました。
モチーフとなったのは、「アスセナーレ」の会場に本物の展示されていた
アウリーティというイタリア系アメリカ人のPalazzo Enciclopedicoプロジェクト。
1950年代にアウリーティはペンシルヴェニアの自宅のガレージにて
136階建ての高層ビルのマケットを制作。
このプロジェクトは人類の知識のすべてを収集した展示会場を作り出すというもので、
1955年、アウリーティはこの「発明」を特許庁に提出しました。
ワシントンの5つの地区に広がるこの壮大なプロジェクトは実現されることはなかったが
今回のテーマ、人間の創造的想像力を文化人類学の視点でキュレートするという
アイディアのきっかけとなりました。
結果は、自分の想像の世界に入り込み、一つの技法、スタイルを用いて
辞典的にそのヴァリエーションを作って行った作家たちの作品群。
精神病を患う作家たちの作品も多くありました。
会場入り口には今まで見ることのできなかった
ユングの『赤い本』の原画が展示されていました。
このセクション、それなりにおもしろいのですが
一つのものに対する固執に基づいた作品が多く、
どこか広がりに欠けていました。
元々人に見せるための作品ではなかったということもあるのでしょう。

ビエンナーレと合わせてドージェ宮では
『マネ、ヴェネツィアへの帰還』展も開かれていました。
(こちら、9月1日で終了)
ロヴェレートの現代美術館 MArt の敏腕館長であったガブリエッラ・ベッリが
2011年にヴェネツィア市立美術館基金のディレクターになってから
ヴェネツィアの美術館への来館者はかなり増え、
この素晴らしいマネ展の企画にも関わっています。
マネはヴェネツィア滞在中、テッィツィアーノなど、
ヴェネツィア派の作家の作品やイタリアバロックの作品を
かなり深く研究しました。
例えば『オリンピア』。
これはティツィアーノの『ウルビーノのヴィーナス』
(フィレンツェのウフィッツィ美術館蔵)の影響を受けています。
普段は美術史の教科書などにこの二つの絵の写真が並べられて
その説明がされていますが
この展覧会ではこの2枚の絵が隣同士に!

以下、広告が最初に入りますが、
展覧会の様子がヴィデオで観ることができます。

この2枚の絵が時代を越えてこうして出会うことにより、
それぞれの持つ独特な美しさや語りかけてくるものがさらに強調されて
とてもおもしろかったです。
マネは印象派の画家と考えらて来ましたが、 
実際には印象派のグループ展参加を何度も断ったそうです。
その理由が今回の展覧会を見て、よく理解できました。