ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

プーリア州 マッサーフラの「呪術師グレグーリオの薬局」探検




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イタリアのお盆に当たる万聖節、およびその翌日の死者の日のお休みを利用し、
夫の大学時代の友人の住む、ブーリア州のマッサーフラという街を訪れた。
マッサーフラはムルジア台地の街。
お隣のバジリカー他州のマテーラと同じように、
グラヴィーナと呼ばれる、石灰岩の浸食による渓谷に挟まれた高台に立つ。
マテーラは月のクレーターのように、お椀型に浸食された高台の谷間(の壁)を彫って造られた
洞窟住居が中心であるのに対し、
マッサーフラでは地面を彫ることによって石灰岩を採掘し、
それを建築資材として利用して住居が建てられた。
その結果、マッサーフラの旧市街の家には食物などが貯蔵されていた地下室(vicinanze)が必ずあり、
これらの地下室が編み目のようにつながっていて、地下都市のようになっている。
専門のガイドに頼めば、これらの通路を案内してもらえるとこのと。
今回見ることはできなかったのだが、
ビザンチン時代の壁画のある地下教会がたくさんあり、
ぜひ再訪したい街である。

マッサーフラの住人は13世紀まではグラヴィーナ渓谷の洞窟住居の中に住んでいた。
渓谷には7階建ての団地のような住居が150戸彫りだされ、岩には階段の跡が見られる。
伝説によれば、グレグーロという名の呪術師が最上階に薬草の製薬工場を構えていたという。
グレグーリオはギリシャ系の医師だっと言われている。
この伝説の影響により、マッサーフラの人々には呪術の才能のあると信じられていた。

地滑りがあってからは、一般のアクセスは禁止されてしまったのだが、
渓谷に谷底に建てられた教会のガイドのヴィートは
遠来の観光客ということで、私たちを特別に案内してくれた。
今思えば、しかし、かなり危険なツアーであった。
岩にただ立てかけられただけの長い梯子を登ったり、
ロープをたぐってのロッククライミング。
洞窟住居には手すりや柵も、一切なかった。


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「薬局」より渓谷の反対側の団地を臨む。
4階より上の部分が見られる。

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危険な蒸気が居住空間のほうに流れて行かないように、
製薬工場の入り口はにじり口にようになっている。
入り口には板がはめられるようになっている。



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この小さな壁龕が、様々な薬草を収納する棚の役割を果たしていたと言われている。
納骨用のニッチよりも小型である。


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谷底から眺めたグレグーリオの薬局。
薬局は実際には僧院の一部だったという説もある。
谷間には薬草が多く栽培されていたらしく、現在でも多くの薬草を採集することができる。


夜のマッサーフラ。
修復が徐々に進められている。


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魔法の杖をふれば、
不思議な世界に通じる扉が現れるのかも。