ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

ボローニャ国際絵本原画展 2016年

ボローニャ国際絵本原画展の50周年を記念する、
2016年ボローニャ展に入選したみなさま、おめでごうとざいます!
また、今回は落ちてしまったけれども、がんばって応募にこぎつけた方たちも
おめでとうございます!!

今年の審査員は、ブックフェア2016年のゲスト国であるドイツの
の編集者、クラウス・フーマン、
アメリカ在住のイタリア人絵本作家セルジオ・ルッツィア
http://www.ruzzier.com/日本でも絵本が出版されています)、
ニューヨークのSchool of Visual Arts http://www.sva.edu/ ;
の視覚芸術におけるナレーションの方法論を担当するコミックアーティスト、
ネイサン・フォックス http://www.foxnathan.com/
日本からは絵本作家の三浦太郎 http://www.taromiura.com/ と、
太郎さんの外国での絵本デビュー作品を出版した編集者、
スイスのラ・ジョワ・ド・リール www.lajoiedelire.ch/ の
フランシン・ブシェさんという、素晴らしいラインアップでした。

5人5様、とにかく全員が絵本、イラストレーション、イメージの物語性に対する
意見が異なり、白熱した議論が3日間続きました。
5人の中で、やはり太郎さんを最初に認めたフランシンと太郎さんの
意見がやはりよく一致していました。
二人は子どもの視点、新しい物事の捉え方にとても敏感でした。
今までの国際絵本原画展の審査員には、コミックの世界で働いている編集者、
アーティストはまれだったのですが、
今回初めて、日本のマンガにも大きな影響を受けているネイサンが参加することにより、
コミックのスタイルによる表現を用いた作品がいくつか入選しました。
また、昨年より、原画展のカタログである『アニュアル』のデザイン、出版、配本に、
ブルーノ・ムナーリの作品出版で世界的にも有名なイタリアのコライーニ出版が
関わったことにより、作家たちもいい影響を受け、
今年の応募作品のレヴェルは昨年よりもよいものでした。
マンガ風の作品は毎年見られるのですが、
今年は特に質の高いもの、物語性の強いものが多く目につきました。
ルッツィアさん(2014年版の入選者てもあります!)は水彩画の達人なので、
とくにテクニックには厳しく、
また具体的にお話を語っているかどうかという点にとても注目していて、
作品の裏に貼ってあるキャプションを一生懸命読み上げていました。
クラウスは作品の伝えるユーモア、見ていて楽しい作品であるかどうか、
という点に注目していました。
編集者として、とても気に入った作品がいくつかあり、
フランシンさんもそうなのですが、
審査員全員の意見が一致しなくて落選してしまったとしても、
絵本になっていく可能性の見出した作品が今回いくつかありました。

応募作品の中には有名な絵本作家のスタイルを真似したような作品が多々見られ、
心配する審査員、とても批判的な審査員もいたのですが、
三浦太郎さんのコメントがとても興味深く、他のメンバーたちをうならせていました。
それは、真似する人が多いということは、やはりそれは作家としての好みだけではなく、
時代が求めているフィーリンクを反映しているからでしょう、ということです。
また、太郎さんは確実に、まったく別の次から作品を解読し、
表面だけでなかく、その裏側にも入り込み、その構造の本質を把握するので、
今回太郎さんとともに3日間することができて、大変な刺激を受けました。
太郎さんの編集者のフランシんは時には太郎さんのコメントに感動し、
太郎さんの選んだ作品に自分の票をいれるというケースがありました。
お二人がこのすばらしい体験を共有することにより、
また一つ、太郎さんの新しい作品が生まれるやかもしれません。

今年も10人の日本人の方が入選しました。
ボローニャでお会いできるのを心から楽しみにしています!