ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2007年5月26日 「ベッタ」

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昨年12月はじめ、仕事でマントヴァに行った帰りに
工房のみなとアレッツォで落ち合った。
毎月第一日曜日とその前の土曜日には、トスカーナ州のアレッツォで
大きなアンティック市が開かれる。
イタリアで最もクオリティーの高いと言われているアンティック市は
年2回開かれるパルマの市と、毎月アレッツォで開かれる市。
見本市会場で開かれるパルマの巨大な市には、
1000軒ものギャラリーなどがイタリア全国とヨーロッパ主要都市から参加。
アンテイック市場の傾向が一望できるのでおもしろいが、
めまいがするほどの量の多さだ。(二日はないと見きれない。)
ここでは昨年、ミラノの運河沿いにお店を出している、
武具のアンティックを扱っているギャレリーのスタンドで
18世紀後半の、ドイツかオーストリア製の小型キャビネットを購入。
開くとちょっと教会の祭壇のような雰囲気なので
一目惚れしてしまった。
わく部分に金箔が少し残っているのだが、
それが黒ずんでいてとてもいい感じになっている。
そして昨年12月、アレッツォでは「ベッタ」を購入。
アレッツォの市は、ペトラルカやヴァザーリなどを輩出したこの美しい街の
歴史的中心街にて展開。
100以上の屋台が、古びた建物をバックに並ぶ。
「ベッタ」は昔友人のチェチリアが住んでいた、
坂になった通りに置いてあった。
「ベッタ」は19世紀前半、パドヴァかヴェローナあたりの出身の箪笥だ。
18世紀後半に特有のしっかりした作りで、少し大きめ。
構造はモミ。全体に 厚めのクルミの 化粧板が張られている。
前面にはオーストリアのビーダーマイヤー風の
フレームがついていてとても優雅だ。
市全体をマエストロとともに細かく見て歩いた結果、
値段も納得の行く、状態のいい箪笥は二つあったのだが、
このビーダーマイヤー風のフレーム、そして触ると革のように
やわらかく、なめらかになった表面の感触に惹かれて
「ベッタ」を購入することになった。
(「ベッタ」はエリザベッタの略なのだが、見た瞬間にそういう
名前で呼びたくなった。マエストロに「フィリッパ」のほうが
その時代に合っていてふさわしい、と反対されたのだが。)
オラトリオでの作業に熱中して、工房でほこりをかぶり始めていた
かわいそうなベッタ。
昨日は釘だらけの後ろ足をとりはずしてやり、
補強の作業を開始した。