ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2007年6月1日 「ミラノのテーブル」

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2006年末に仕上げた「ミラノのテーブル」が
ヴァティカンの近くにあるオークションで売れたとい報告が今日あった。
このテーブルは真っ黒に塗られていてぼろぼろだった。
リッカルドの知り合いのおばあさんの物置にあったものだ。
ペンキをはがしてみると、昔の鉄製アイロンの大きな焦げ後と、
30%破損した寄木象眼による装飾がテーブル中央に
施してあるのが発見された。
このテーブルは19世紀末にミラノで制作されたものだ。
スタイルはネオ・ルネッサンス様式が少し響く折衷主義。
修復してみる価値は十分あるということで
その時、ルイージ・フリッポ様式のナポリ製のセクレテールを
なおしている最中だったが、私がやることになった。
図柄のなくなってしまった部分を想像して描く楽しみもあるし、
寄木がもっと上手になりたかったので引き受けることにした。
精神的にも苦しい時期にあったので与えられた課題が難しければ
難しいほど打ち込めるからいい、とも思った。
テーブル中央のデコレーションは、マッジョリーニの家具にも
よく登場するネオ・クラッシック風のモチーフ。
楽器と楽譜、矢筒、花などをメダル付きリボンでまとめたもの。
図柄を完成させ、紅葉、くるみ、マホガニー、紫檀などの木を
パズル状にはめ込んで行くところまではすいすい進んだが、
(糸鋸を使わず、カッターと彫刻刀を使用)
オリーブの枝や葉を着色をしたあとの仕上げがとっても難しく、
何度やりなおしたことか。
仕上げはセラック。最初は透明なセラックで磨き上げてみたが
木の色彩のトーンがうまく映えず、これもやりなおし。
テーブルはしばらく工房のギャレリーに置かれた。
値段を聞きに入って来る人たちはたくさんいたが、
工房はちょっとはずれた場所にあるので、結局売れなかった。
そこで先月オークションに出され、2,200ユーロで売れた。
予定していた額ではないのだが、とにかく売れたということで、
このテーブルは再び時間を旅するチャンスを得たのだ。
きっとどこかのお店に現れるにちがいない。