ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

ボローニャ児童図書ブックフェア2011年 その3 本と未来

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こちらは歌手のルチオ・ダッラの住むカヴール広場の庭園での展覧会。
ボローニャの美術学校の学生たちと先生たちによるインスタレーションです。
ペットボトルによる花々。
おそらく曲芸師によるショーも行われ、
そのあと花は観客に配られたのでしょう。
夕方、街の中をこの花を持って歩く女性たちを見かけました。

ブックフェアの国際絵本原画展と同じ会場に
いつもゲスト国のイラストレーション展が開催されるのですが、
今年はリトアニアがゲスト。
展示方法がなかなか凝っていて、内容もかなり質の良い楽しいものでした。
市内でも中世史美術館にてリトアニアの
美術学校のイラストレータ展、
アルキジンナージオ市立図書館では
リトアニアの絵本の歴史展が開催されていました。
リトアニアの本の挿絵は歴史的にも非常に発達している分野であったことが
よく伝わって来ました。
美術学校にもなかなかよい先生たちがいるように感じられました。

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久しぶりに訪れた中世史美術館。
ボローニャ大学法学部の教授たちの棺が展示されています。
そのファサードには知の源泉である本たちが実に鮮明に描かれています。
こちらは本を枕に永眠する先生。
棺には後期ルネサンスに典型的な紋様が見られます。
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棺にはよく授業風景が描かれ、
眠りこけている学生図、おしゃべりをする学生などがちゃんといたりします。
今も昔も同じだなあ・・・。
こちらは必死に本にかじりつく聴講生。

書いてはいけないことの書かれた本。
禁断の書。
隠される本、燃やされる本。検閲。
思想的闘争の道具としての本。
本と人間の関わりについて考えさせられます。

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ボローニャには昔、たくさん運河が見られました。
リーギ通りに沿って、少し見える部分があります。
水力により、織物産業のかなり発達していたボローニャ。
毎年ボローニャに戻るたびに必ず見に行くところがいくつかありますが、
運河はそのうちの一つ。
2007年の入選者のよっちさんには
ドキュメンタリーの中で運河の絵を描いてもらいました。

下の写真はボローニャから送った箱の中に入れた
本の中のいくつかです。

まずは今年の国際絵本原画展のアニュアル。
(その隣は「アンデルセン」というイタリアの
絵本と児童図書の関する批評誌。
国際アンデルセン賞とごっちゃにされることのある、
イタリアのアンデルセン賞の主催者でもある。)
今年は日本人入選者のみなさまの19人のうち、16人の方が
ボローニャ参上!!
大変な状況の中での日本ですが、みなさまがんばっていらっしゃいました!!
インタビューではみなさまのおもしろいお話をたくさん聞かせてもらい、
刺激になりました。
なかでも入選者の宗像さんの「絵本は子どもが接する最初のアート」
という言葉が印象的。


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的場カヨさんの素敵な挿絵による
『こぶたのハミング』。
カヨさんはこの作品で入選。
その隣は過去の入選者吉田稔美さんおすすめの児童書、
『ビビを見た!』。
どちらも読むのが楽しみです。
(イタリア語に翻訳したらおもしろそうな児童書を探索中です。)
左上に見られるのは、今年の審査員パオロ・カントンのトピピットーリ社で
出版されたしむらけいすけさんの絵本、『悪い子くんと良い子くん』。
姪っ子のために購入しました。
過去の入選作品から生まれた絵本プロジェクトです。

こちらは今年の入選作品、やまだかずあきさんの『赤い風船』。
マイケル・ノイゲバウワーのマイン・エディションから出版。
できたてのほやほやです。
たくさんの希望を与えてくれる感動的な絵本です。

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ドキュメンタリーでもこの絵本の生成過程を記録させていただいた、『浦島太郎』。
イタリア語、日本語の2カ国語入り。
出版社はローマのオレッキオ・アチェルボ。
オレッキオの編集者、ファウスタさんが国際絵本原画展の審査をしているときから
気になっていた作品でした。
斬新な解釈により、現代に蘇る浦島太郎。
クレイアニメの田隅真由子さんとグラフィックデザイナーの
ダヴィデ・ロンガレッティのお二人のよる作品。
お二人はことし、ままとぱぱに!!

国際絵本原画展の入選作品の中から、実はたくさんの絵本が生まれています。
国境を越えた、編集者とイラストレータとの間の電撃的な出会い。
ボローニャのブックフェアはその実現を可能にする環境を造り出しています。
また、世界の編集者同士が出会ってともに新しいプロジェクトに挑む姿も見られます。

ローマに帰ってみると、
家のほとんど目の前に、こんなポスターが!!
バスにも貼ってありました。
ボローニャでもそうですが、
ローマでも日本人の音楽家によるチャリティーコンサートが市内で行われ、
赤十字に6000ユーロ以上が納められたとのことです。
みな日本に期待しています。
環境を考える未来の地球人の先駆的存在として生まれ変わるのではないかと。


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