ローマ・デッサン帳

ローマでの生活、見たことや感じたこと、絵本と美術関係の仕事について綴ります。

2007年6月15日 修復プロジェクト発表

昨日、 オラトリオでの修復に関する報告会議が 行われた。
まずは工房長がプロジェクトの概要を説明し、それに続いて
オラトリオでの研究と修復をライフワークにしている建築家、
アンナがオラトリオの歴史を語ってくれた。
そのあと、主力の3人による修復作業の過程の説明があり、
私の制作した8分程度のドキュメンタリが上映された。
美術史的に価値の高い空間における、大掛かりな修復現場での
作業体験は参加者たちに大きな感動を与えた。
その部分も伝えたく、参加者たちが感想、
感動を語るコーナーも設けられた。
私は記録スケッチ、ヴィデオカメラによる撮影、修復
(主に木彫り)と、3つの方法でもって修復対象に
アプローチできたのがよかったと語った。
今までやってきた、一見するとばらばらな事柄がやっと
一つにまとまったような気がした、と。
そして何よりも、外国人でありながら、イタリアの「歴史」に
貢献できる喜び・・・
工房長に「技術的にも完成度が高くなった」と、ほめてもらった。
(まだまだ分からないこと、一人では解決できないことは
たくさんあるのだが、ほめられるのはうれしい!!)
このプロジェクトに関しても、CDの形で出版される
報告書作成に参加させてもらったので、とても興味深かった。
これからの「修復家」は、技術面はもちろんのこと、
修復される対象の歴史的、文化的背景、文化財修復に関する
基本的知識がないといけない、というのが工房長の考えなのだが、
ある意味で、「修復家」という専門職が
存在しなかった19世紀以前ではひょっとしたら
それは当たり前な考え方だったのだと思う。
修復をしていた人たちは、制作者たち自身であり、
建築家、彫刻家、画家たちは美術史家、鑑定家でもあり、
時にはアンティックを売っていたということである。
修復に対する考え方は時代によって異なり、
時代によっては修復が今で言う偽物作りに近かったところもある。

発表会議のあと、工房全体の年度末パーティーが開かれた。
工房の学校に通っている人にはもう退職している人も多いので、
すばらしい家庭料理を披露してくれるおばさんたちが大勢いる。
目玉のなす、ポテト、ペペローニのオーヴン焼きはすぐに
なくなってしまった。(来年まで待たないと、食べられない!)
自分の持ち寄ったpseudo-sushi(スモークトサーモンを使用)もしかし
あっという間になくなってしまった。
パーティーには、修復を習い始めた時に本当にたくさんのことを
教えてくれたマウリーも来ていたのだが、
彼は残念ながら、内部のトラブルで工房から遠ざかってしまった。
この工房にも色々と内部確執があり、大変そうなのだが、
文化的活動も行っている珍しいところなので、
ある意味で出会えたのは幸運だったと言えよう。